最近、廃棄物業界はなかなかの大騒ぎです。2017年末の中国のプラスチック輸入禁止の話は何度か書いていますが、その禁止から1年ちょっと経った2019年年始から、国内に滞留しているプラスチック類の受け入れ先がなく、問い合わせが激増しています。上のグラフは、1988年から2016年までの世界の輸入プラスチックの蓄積量です。 中国がダントツで全世界シェアの72.4%、170.5百万トン、約800億円。数字が大きすぎてよくわかりませんが、世界シェア72.4%の国がストップしたのですから、ダメージは計り知れません。一方、日本は150万トン/年 を輸出していたといわれていて、このうち6~7割、おおよそ100万トンが中国へ輸出されていたとされています。これがすべて、国内のどこかの処理業者でリサイクル、焼却、埋め立てなどの処分をしなくてはならなくなっています。
なぜ中国は輸入禁止にしたのか? 理由は明確で、分別されていないゴミだからです。ということは、分別されていないゴミが100万トン、国内の処理会社を探して動き始めたということです。しつこいですが、ゴミなのでリサイクルはできません。一方で、焼却、埋め立てにも基準があり、何でも良いわけではないです。ただ、焼却、埋め立て業者は非常に努力をして、これらを何とかしようと、行き場がなく貯まってしまったプラスチックゴミを受け入れ続けています。そして、企業側には、心入れ替えて、それぞれの基準に分別することが求められはじめています。しかし、人間の行動は簡単には変えられず、10年以上分別せずに捨てていた人たちが、急に分別できることはほぼありません。仕方なく、業者側は処理金額を値上げし、粗悪なものの受け入れ規制を始めています。結果として、「国内で処分ができるようにしっかりと分別する」「これを機会に、リサイクルの仕組みを構築したい」と、自らの行動を変える企業以外とは新規契約を締結しないという動きになってきています。
環境省が、今回の件を周知するために出した文書には次のようなことが書いてあります。です。少し、専門的でわかりづらいかもしれませんが、言いたいのは、大量にプラスチックゴミが国内に流通し始めているので、
1) 捨てる企業は、排出者責任として、相応の処理金額を支払うことと処理の確実性をきっちり見てください。
2)処理会社はたくさん問い合わせがあるでしょうが、許可された範囲の中で、適正に処理をしてください。特に、火事には気を付けて。
3)もし可能であれば、市や区で持っている焼却場で、プラスチックゴミを燃やしてもらえないだろうか。
それ以外にも書いてはあるのですが、今回着目したのはこの3点です。環境省がこんなことを改めて通達を出すほど、国内のプラスチックゴミの現状はひっ迫してきています。
企業に勤める皆さん、特に製造業でない人は、自分たちのゴミを誰が、どこに運んで、最後どうなっているか知らない人が多いはず。企業がゴミを捨てるのではなく、企業で働く皆さんがゴミを捨てるので、皆さんが分別しないで捨てていたら、専門業者が分別するしかありません。業者のコストが上がっているとすれば、廃棄コストが上がるのは当たり前。しかも、今起こっていることは、お金で解決しない可能性があるということです。中国という巨大なゴミの受け入れ先を失った日本をはじめとするアメリカやヨーロッパは、国内で処理を完結しなくてはなりません。そして、いつでもゴミは捨てられる、お金を払えば業者が何とかしてくれる時代は終わり、自らの責任で、自社の製造プロセス、最終製品の最後までマネジメントしなくてはならない時代が来ます。売上高より、回収した量で企業価値が決まる時代です。ゴミを自由に捨てられない時代は、すぐそこまで来ています。