NEWS | 建築
2019.07.12 16:08
埼玉の郊外一戸建て「北越谷の住宅」は、伊藤維+沼野井諭によって、若い共働き家庭のために設計された。
施主の夫婦はともに東京勤務だが、お互い週3日以上在宅ワークが可能なため、「東京に毎日勤めるための郊外住宅」ではなく、都会と自然の間のちょうど良い街として、彼らにとって郊外が文字通り「暮らしの中心」となるイメージを持っていた。
そんな彼らに応えて提案されたのは、本格的な仕事場・多種多様な趣味などの居場所が、4×8板モジュールによる単純なナインスクエアグリッド架構に散りばめられた案だった。
2.43m四方の各グリッドでは、夫婦で異なる多くの趣味や、料理や洗濯といった日々の共同作業、仕事場など、断片的な空間群が緩く仕切られながらも繋がる。
数が多い分それぞれの「部屋」は面積としては小さいはずだが、中心のホールに穿たれた内窓やグリッドから飛び出した家具などによって空間の繋がりが生まれ、むしろ不思議とゆとりが感じられる。
一階では粗いコンクリート基礎が露出して、外部にあるような質感が家の中に持ち込まれている。木製の玄関扉は引戸として大きく開くこともでき、玄関が民家の土間のように外部と繋がった使い方も想像できる。「郊外に暮らす」というイメージが家の中だけでなく街全体に広がっていくような、想像を喚起させる開放感のある住宅だ。