ソニー社員の研修機能と人事採用のための空間「PORT」
「素の状態」からアプローチするリノベーション

建築設計事務所sakumaeshimaが、東京・品川にあるソニー本社の改修計画「PORT」の設計を担当した。

同計画は、社員のための研修機能と人事採用のためのエリアを改修するもので、フロア中央に広場のようなオープンスペースを設け、その周りに透明な研修室と面談室を取り囲むように配置。施設の利用者が、自然に中央のオープンスペースに集まり、様々な活動を許容できるようなデザインを目指した。

空間は、人事や採用の際に利用されるスペースらしく「多様な個性を受け入れる器」として、既存建物の躯体を剥きだしの状態、いわゆる「素の状態」まで戻した上で、その中に多種多様なマテリアル、家具が広がる構成だ。

天井は、既存のパネルと照明のみを撤去し、設備ラインはそのままに、残ったグリッドのフレームを利用して照明を新設。床は既存カーペットを剥がし、剥き出しとなったOAフロアにクリア塗装が施され、丁寧に並べ替えられた。そのジョイント部と電源穴は製作したステンレスのピースで仕上がっており、市松状に残った既存カーペットの糊の跡は、新たに設えられた床の表情にもなっている。

壁も同様に、「再構築」した既存空間に寄り添うように木毛セメント板、フレキシブルボードで新たに仕上げた。

▲Photos : Joshua Lieberman

設計を担当した、朔と前嶋の両氏は「対象となる建築物の『素の状態』に対し、新しい要素を慎重に加えていくというこのリノベーションの手段は、最小限の手数で、建築を全く別の方向性へ導くことが出来る可能性を秘めている」と語る。

空間の中に設置される家具も、メーカー、時代、既製品と造作など、様々なものを「等価」に扱い、今後追加されていくであろう新しい要素も受け入れ易くしたそうだ。

日々、流動的に変化していくオフィス空間において、更新・変化のための余白(余地)を残すことで、活動する人にとって、自由なレイアウトや使い方を許容する包容力のあるニュートラルな空間に仕上がっている。End

SONY 品川本社 「PORT」

用途
オフィス
場所
ソニー 品川本社ビル
完成
2018年11月