NEWS | 工芸 / 建築
2019.07.03 10:20
オークションハウスのPHILLIPSでは、建築家 伊東豊雄がデザインした504 x 392 cmの手織カーペット「Golden Section(黄金分割)」が出品され、4万ポンド(約548万円)で落札された。
Oliva Sartogoが2018年に設立したアート・建築・デザインのあいだの対話を促すイニシアチブ「ARTinD」とPHILLIPSのコラボレーションで、世界的な建築家10人によるアートプロジェクトから生まれた作品だ。
美的調和の極みともいえる黄金比は、パルテノン神殿(BC447年)など古代から芸術家や建築家の作品に影響を与えてきたが、今回は各人が黄金比をテーマにシルクの手織カーペットをデザイン。
伊東は建築を現代の日本の大都市に住む人のための「衣服」と考えているという。この深い社会学的な関心は、彼のデザインアプローチや仕事の質にも浸透している。そして、自然界にインスピレーションを得て、有機的な形を採用し、これを滑らかなポストモダンのアプローチにシームレスに取り入れてきた。
このことは、このユニークなプロジェクトでも伊東の作品の基礎となった。台湾大学社会科学部棟の図書館では、樹木のような柱が支えるセグメント化された天井を採用。その合間から見える天窓は、枝を通り抜ける自然光を模したもので、世界で有数の人口密度が高い都市への解法となることを目指した。
そして、カーペットのスケッチとして、この天井のデザインを単純化して縮小し、柱を点にして図を描いた。この点をつなぐことで、黄金分割の美しさをもつオウムガイの殻を思わせるらせん模様が出現。リズミカルで繊細な効果を出すために、このらせん形を繰り返した。シンプルさこそが伊東のカーペットデザインへのアプローチとなっている。