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2019.06.21 13:43
IoTの時代を迎え、環境中の電子機器の数はますます増加している。こうした機器は充電や電池交換が必要で、各機器への電力供給のコストの問題も現れている。
このような問題に対して、東京大学大学院工学系研究科の川原圭博教授らの研究グループは、「マルチモード準静空洞共振器(Multimode QSCR)」という送電器構造を考案・実装したことを発表した。これにより、部屋のなかのどんな位置にある機器にもワイヤレス充電ができることを実証したという。
今まで困難だとされてきた、広い三次元空間をカバーするワイヤレス充電に向けたアプローチとして、2017 年に「準静空洞共振器(QSCR)」が発表されていた。しかし、この場合、部屋の中央に巨大な導体棒を設置しなければならず、空間内の磁界強度分布に偏りがあるなど、大きな課題があった。
そこで、同チームは金属板上の電流が複数の向きに流れる点に着目し、複数の磁界分布を生成できる、マルチモード準静空洞共振器という新たなアプローチを考案。そして、理論的な解析により、部屋全域への高効率なワイヤレス充電や、導体棒なしでの駆動が可能であることを証明した。
今回の発表では、3 m × 3 mの部屋のスケールにMultimode QSCR を実装し、部屋全域へのワイヤレス充電ができることを実証。この手法は、広範囲に数十ワット程度の電力を送信できるので、将来的には電池が切れないIoTシステムへの応用が期待されている。