樹脂や金属の代わりに食品を素材として利用する3Dプリンターは、以前から存在した。しかし、ひじょうに高価だったり、3Dプリンターといいながら、高さのある積層が難しく、ほとんど平面に近いプリントしかできない製品も含まれていた。
ドイツで開発され、2019年末までに出荷が予定されている「マイカシーニ」は、価格面と造形性能の2つの問題を、構造、プリント素材、サービスの3つの工夫によって解決した3Dチョコレートプリンターである。
まず、構造面の工夫は、詰まりや清掃面での不安がある素材の搬送パイプやチューブ類は利用せず、チョコ素材をプランジャーによって押し出すメカニズムを、直接プリントヘッド部に設けたこと。
また、スムーズな積層を実現するためには、プリント直後のチョコレートが垂れずに短時間で硬化する必要があるが、専用のステンレスカートリッジ入りのチョコ素材を用意することで対応している。つまり、ビジネス的には、このカートリッジがインクジェットプリンターのインクタンクのような役割を果たす。
それでもチョコ素材は樹脂に比べて造形上の制約が大きいため、プリント可能な立体物の設計はそれなりに難しいものとなる。そこで、テキストに関しては必要なメッセージをタイプするだけで出力でき、さらにメーカーが用意した3Dプリント可能なデータのライブラリーにもアクセスできる専用アプリを通じて、CADの専門知識なしにマイカシーニを使えるサービスも整備される予定だ。
価格的にも、市販時の予価が396ユーロ(約48,600円)と一般的なホビー用3Dプリンターと同レベルに抑えられており、フード系プリンター普及のきっかけとなりそうな製品と言える。