NEWS | サイエンス
2019.06.12 14:28
シカの増加が川の魚の個体数に影響するのではないかという、森と川の意外なつながりを示唆する研究が発表された。
京都大学東南アジア地域研究研究所の中川光特定助教は、ニホンジカによる大規模な林床植物の食べ尽くしがおこっている芦生研究林内の由良川において、2007年5月から2018年6月にかけて、シュノーケリングによる魚類の個体数のカウントと環境の測定を実施した。
その結果、調査地の川では森から流れ込んだ土砂が堆積して砂に覆われた川底が増える一方で、大きな石に覆われた川底は減少。そして、この環境の変化に対応して、魚類では大きな礫(れき)を好むウグイという種が個体数を減らした一方で、砂地を好むカマツカという種が増加する傾向が観察されたという。
シカの個体数の増加の影響は現在、日本だけでなく世界中で問題になっているそうだ。この研究は、その影響が森林だけでなく、河川の環境や生き物たちにまで拡がる可能性があることを、実際の観察データをもとに示しているのだ。
また、この研究は、水質改善だけでは解決できない河川の生き物の問題というのもあることを示唆しているだろう。今後の調査が期待される。