NEWS | アート
2019.05.20 16:46
イタリアの文化施設「Tenuta Dello Scompiglio」のために制作されたインスタレーション「Sanctum」は、オランダのアーティスト リーバイ・バン・ヴェルー(Levi van Veluw)がその宗教観を表現した作品だ。
宗教は世界中で芸術、建築、物語の発展において重要な役割を果たしてきた。多くの人は礼拝の場への信仰心を示したり、神聖な儀式を行ってきた。そこで同氏は、人々が信仰心に向かうために用いる豊かな形式言語と想像力を探究したそうだ。
まず、宗教的な建物である礼拝堂という神聖な場所が拠点となる。そこに集った人々のなかに神が存在することを象徴する場である。
礼拝堂の内部は「前庭」「聖域」「至聖所」の3つの空間からなり、作品は対称性と調和を示している。宗教的構造物という古くからある構成と戯れながら、観客を神聖な場へとより深く引きつけていく。
しばらく下に降りていくと、神秘的なダークブルーの光が壁にある狭い開口部から輝いているのが見える。この開口部を通り、天井の高い地下空間である前庭に至ると、両側に巨大な柱が現れ、石炭の山が床の向こう側に散らばり、中央の通路は見通しがよいままになっている。
この通路を進むと儀式の場である聖域にたどり着く。香りのよい水が流れ、中央には、格子、箱、開口部からなる至聖所がある。これは、宗教が再び重要な役割をもつ新しい世界への入口なのだろうか。それとも、アーティストは既存の象徴を使って新しい宗教へと心を誘うのだろうか。これが、作者が観客に託した問いなのだ。なお、本作の展示は2019年9月22日までとなっている。