エネルギー消費なしで高温から室温以下に冷却!?
熱力学の第二法則に反する実験が公開

▲Image: Andreas Schilling, UZH

熱力学の第二法則というものをご存じだろうか。たとえば、熱はより高温のものからより低温のものに伝わり、その反対はあり得ないとされる。熱湯が入ったティーポットをテーブルに置いたとしよう。時間が経つとだんだんと冷めていくが、お湯の温度がテーブルの周りの温度を下回ることはない。

ところが、チューリッヒ大学物理学部のAndreas Schilling教授の研究グループが行った最近の実験では、この熱力学第二法則に反して、外部電源を使わずに9gの銅を100℃以上から室温以下に冷却することに成功したそうだ。

彼らが開発した装置には、ホテルの部屋にあるミニ冷蔵庫の冷却装置として知られる「ペルティエ素子」という電子部品を使用。この装置を使えば、電流を温度の差に変換することができる。

一連の実験ではインダクタを使い、2つの物体間の熱の流れがたえず方向を変える振動熱電流を作り出した。この場合、熱も一時的により冷たい物体からより暖かい物体へと流れるので、より冷たい物体はさらに冷却されることになるのだ。

Schilling氏によれば、理論的には、未発見の理想的なペルティエ素子があれば、同じ条件下で-47℃まで冷却することが可能で、「この非常に単純な技術では、大量の熱い固体や液体、ガス状の素材を、エネルギー消費なしで室温以下に下げることができるはずです」と語っている。End