世界初の3Dプリント人工心臓・血管の作製に成功
患者の細胞と生体物質でパーソナライズ臓器も視野に

▲ Credit: Advanced Science. © 2019 The Authors.

イスラエル・テルアビブ大学研究チームはこのほど、患者の細胞と生体物質を使って世界初の3Dプリントによる人工心臓・血管を作製した。

これまでは、生物学とテクノロジーの交点に位置する再生医学の科学者が、血管のない単純な組織だけをプリントすることには成功していた。今回の人工心臓は、患者の免疫学、細胞学、生化学、解剖学的な特性と完全に一致するものだという。

今回は素材として、糖とタンパク質からなる物質を、複雑な組織模型の3Dプリントのための「生物学的なインク」として使用した。細胞や血管の3Dプリントはこれまで実現していなかったが、将来的にはパーソナライズされた組織や臓器の移植というアプローチの可能性も生まれるとのこと。

この研究では、まず、脂肪組織の一部を患者から採取。次いで、組織の細胞と細胞材料を分離し、細胞が多能性幹細胞になるようにリプログラムする。一方で、コラーゲンや糖タンパク質のような細胞外高分子の三次元網目構造である「細胞外マトリックス(Extracellular Matrix)」を、プリント用の「インク」として機能させるため、パーソナライズされたヒドロゲルへと加工する。

細胞はヒドロゲルと混合した後に、心臓細胞や内皮細胞に効率的に分化し、血管や、やがては心臓そのものと合致する患者固有の免疫適合性心臓パッチが作製されるのだ。組織や臓器をうまく作製するには、患者固有の「生来の材料」の使用が不可欠なのだそうだ。End