画像：研究チーム提供

軽量でありながら非常に強い素材であるクモの糸は、新しいタイプの人工筋肉やロボットのアクチュエータなどにも使える可能性のある、たぐい稀な特性をもっているそうだ。

マサチューセッツ工科大学の研究チームの発表によると、クモの糸は弾力性のある繊維で、湿度の変化にとても強く反応するという。空気中の湿度が70％以上になると、突然収縮したりねじれたりするので、バルブを制御するなどの動作を行うアクチュエータ向けに開発中の他の素材にも負けないほどの力を秘めているのだ。

同チームは、人間の髪の毛など多くの材料をテストしたが、ねじれの動きは見られなかった。これに対して、クモの糸の優れた強度重量比、柔軟性、強靭さ、弾力性は知られており、世界中でこのタンパク質繊維の特性をもった合成繊維の再現に取り組んでいる。

実際、クモがどんな目的でこのねじり力を必要としているのかは不明のようだ。研究者たちは、湿気に反応して超収縮（supercontraction）が起こるのは、朝露に反応して糸が強く引っ張られることで傷を負わないようにしたり、振動への反応を最大にして獲物を感知できるようにしたりしていると考えている。

クモの糸は、主に「MaSp1」と「MaSp2」という2つのタンパク質で構成された繊維で、ねじれ反応の重要な要素でありMaSp2に含まれるプロリンが水分子と反応すると、水素結合が非対称に破壊されて回転が起きるのだとか。

こうした特性の発見から、まったく新しい合成素材の開発が期待されている。湿度駆動型のソフトロボットやセンサーから、スマートテキスタイルやグリーンエネルギー発電機まで、幅広い分野での活躍が見込まれている。