NEWS | サイエンス
2019.02.15 18:55
液体の水が火星の南極氷冠の下に存在することを示唆する研究が2018年の学術雑誌「サイエンス」に発表されたが、このほどアメリカ地球物理学連合(American Geophysical Union)の学会誌「Geophysical Research Letters」には、極地の氷冠の下に液体の水が存在するには地下熱源が必要だという新研究が掲載された。
火星の両極には2枚の巨大な氷床があり、どちらも数kmの厚さがあるとされる。地球上では、液体の水が厚い氷床の下にあるのが一般的で、氷と地殻が触れ合う場所で地球の熱が氷を溶かすのだ。
新研究の著者たちは、まず氷冠の下に液体の水が検出されると仮定し、次に水が存在するのに必要な要因は何かを考察した。そこで火星の物理的なモデリングを行い、火星内部からどれだけの熱が出ているか、氷を溶かすのに十分な塩が氷冠の底部にあるかどうかを分析。塩は氷の融点を大きく下げるので、塩による氷冠の底部での融解がありうると考えた。
ありうる熱源の1つは火星の地下の火山活動で、深い内部からのマグマが約30万年前に地表に向かって上がったのだと推測。ただ、噴火のように地表を壊すのではなく、地下のマグマ溜まりにとどまり、これが冷えるにつれて熱を放出し、氷床の底の氷を溶かしたというわけだ。さらに、今日でも氷床に熱を伝え、液体の水を生成していると想定している。
この新しい研究では、より近い時期に地下火山活動があったことを提言。何十万年も前に火山活動があったのなら、今日も活動があるのではないかと著者たちは説明している。