NEWS | サイエンス
2019.01.10 16:46
北海道大学大学院薬学研究院の野村洋講師、京都大学大学院医学研究科の高橋英彦准教授、東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授らの研究グループは、忘れてしまった記憶をスムーズに思い出せるようになる薬を発見したと発表した。
同グループは、脳内のヒスタミン神経系を活性化する薬が記憶に与える影響をマウスとヒトで調査。その結果、記憶テスト前にヒスタミン神経系を活性化すると、忘れてしまった記憶でも思い出せるようになることがわかったという。
たとえば、マウスにおもちゃを見せて形を学習させると、通常のマウスは1週間ほどで思い出せなくなるが、こうした薬を与えると、おもちゃの記憶を思い出せたのだ。
この薬には嗅周皮質と呼ばれる脳領域の活動を上昇させる効果があり、ヒトでの記憶テストの結果では、特にもともと記憶成績が悪い参加者ほど薬の効果が大きかったそうだ。
長い時間が経つと記憶は思い出せなくなるが、ふとした瞬間に思い出すように、記憶の痕跡は脳内に残っていると考えられている。それゆえこの研究成果は、アルツハイマー病などの認知機能障害の治療薬開発にも貢献が期待されている。