フランス パリで開催された「MANGA⇔TOKYO」展レポート
東京という"都市"が持つ魅力を辿る

11月の終わり、パリは寒かった。
物悲しくひっそりとしたシャルルドゴール空港は、日が沈む時間を迎えていた。
フランスの最初はいつもこの落ち着いた気持ちから始まる。しかし、今回の感じは少し違った。
期待感からくる高揚感が、あったからかもしれない。

▲会場に着くとまず、軽やかな鋼製フレームとおおらかな大屋根が印象的な外観が飛び込んでくる。

フランス・パリのラ・ヴィレット(La Villette)にて「MANGA⇔TOKYO」展が、2018年11月29日(木)から12月30日(日)の期間、「ジャポニスム2018」の公式企画として開催された。

本展は、日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮作品は、都市〈東京〉の特徴や変化を、多数の原画や模型、映像などで辿る企画展示である。

会場となったラ・ヴィレットは、パリの19区の東側の端、ベルナール・チュミ設計としても知られるラ・ヴィレット公園の中に位置する。この公園は、1974年までは食肉処理場として稼働していたようだ。

ここは、学生時代の建築の講義で必ず登場する(と言っても過言ではない)建築界では言わずと知れた公園であり、世界的なコンペティションを経て誕生した公園、文化施設だ。

今回、この一角で開催されるこの展示で、東京で建築事務所を営む私たち(SAKUMAESHIMA)が空間構成を担当させて頂く機会に恵まれた。この場所で仕事が出来る事にも興奮するが、何より今回は、展示企画の内容がとても面白いものだったのだ。

この展覧会の中身と魅力を、現地まで足を運べなかった方でも感じられるよう、ビジュアルを中心にお伝えしたいと思う。

▲大屋根の下に広がる半外部空間には、マンガアニメを都市的スケールで感じられるバナー広告が迎えてくれた。向かって左側には、女性の聖地である池袋乙女ロードの壁面広告。右側には、男性の聖地、秋葉原の壁面広告が展開された。

▲会場内に入ると、正面に巨大スクリーンを望み、その足元には東京の都市模型が広がる。鑑賞者は、各々に都市模型とスクリーンに映し出される東京の街をリンクさせて、東京を擬似的に体感できる。

▲展示空間。建物が持つ力強さと軽やかを合せ持つ鋼製フレームによって、巨大な空間が広がる。

▲東京の都市模型。巨大スクリーンに流れる映像と、都市模型のライティングが連動する展示。映像の中の舞台が、実在する東京のどこに位置しているかを示す。

▲2階に上がってすぐ広がる展示空間。アニメマンガの中で起こる破壊と現実の歴史の破壊と復興を同時に展示させることで、フィクションとリアルの関係性をダイナミックに感じさせる内容となっていた。

▲展示中盤は、空間の中心に計画されたコマンドセンターを想起させる展望台で、鑑賞者が破壊獣達と対峙する構成となっていた。この展望台からは、1階の都市模型と巨大スクリーンも鑑賞することもできる。

▲展示終盤では、東京という都市のなかで、商店街や街の観光資源としてのキャラクターとリアルな街との関わりが映像作品を中心に展示された。

▲最後に1階に降りてきて展示はエンドロールとなる。鑑賞者は、巨大スクリーンと東京の都市模型に、この展覧会のピリオドを印象付けられて会場を後にする事になる。ここまでくると見応えのある展示内容に圧倒されている状態に気づく。

本展は「TOKYO」のいう都市を「MANGA」を切り口で編集することで、東京を舞台に起こるフィクションと現実世界の東京の歴史とが、リアルに交錯する展示構成で、よりハイブリットな都市のリアリティを作り出していた。

都市計画により計画的に街づくりが行われる一方で、東京という都市が、マンガ、アニメ、ゲームや特撮などの創作物の中の舞台として様々な描かれ方をしている中で、実際の街も(聖地巡礼のような)創作物の影響を通して、変化、発展しているということに面白さを感じた。

秋葉原や池袋のように人々の趣味嗜好が都市を変える力を持っているのだ。これこそが「TOKYO」の魅力と言えるのではないだろうか。End

「MANGA⇔TOKYO」展

会期
2018年11月29日(木)~ 12月30日(日)
*現在は終了
会場
ラ・ヴィレット