台湾のデザイナーズホテル事情。
まずは台南
「ザ・プレイス」の室内編

先日、台湾を訪れた際、台南と台北で最新のデザイナーズホテルに泊まる機会があり、それらのコンセプトや、備品などを含めた細部に及ぶデザイン上の気配りが見事だったので、3回に分けて紹介することにした。1回目は、台南の「ザ・プレイス」の室内編である。

ザ・プレイスは、台南駅からクルマで約10分のところにあり、モダンなショッピングモールの「南紡夢時代」や映画館、賃貸オフィススペースなどと躯体を共用する複合施設の一部となっている。
 
建物の上部に「台南紡織」の文字が掲げられていることから、紡績会社が工場の跡地などを利用して展開している新規事業の一環と思い、後から調べてみた。すると、まさにそのような土地を利用して日本の三菱地所設計が手がけた再開発プロジェクトであり、紡ぐ・織る・包むといった「糸」や「布」にまつわるキーワードに基づくコンセプトワークが行われていることが明らかとなった。

ホテル部分のデザインは、オランダのメカノ建築事務所が手がけたもので、各部屋が狭小住宅のそれのように合理的に設計されている。例えば、筆者が泊まった部屋は、シャワーとトイレ以外は固定的な壁を設けず、ワンルームの中に大きな黒い木製の機能ユニットをひとつ置くことで、スペースを分ける構造だった。

機能ユニットは、クローゼット、ベッドのヘッドボードと天蓋、冷蔵庫や金庫、アメニティの収納スペース、洗面設備を融合したもので、白い壁や床とコントラストをなす。そこに、差し色的にカラフルな枕やクッションなどが配されている。

また、間接照明主体の中に、ひとつだけレトロな街灯風のライトがあり、特別なスポット感を演出していた。

テレビのリモコンは、むき出しで置かれることなくマニュアルを兼ねたスリーブに収められており、メモ用紙やポストカードも、六角形だったりエンボス加工がなされていたりと、とても凝ったもの。周辺や館内の案内にしても、バインダー入りの重厚なものではなく、あえて薄く軽い紙にインフォグラフィックス的なイラストやイベント情報のQRコードなどを配してつくられている。



さらに、面白いと感じたのは、室内用のスリッパに施された線画である。履物をベッドに見立てて、男女の寝姿が描かれているのだ。

アメニティ類は、機能ユニットの洗面脇の戸棚内の布製のポケットに収納されている。この部分は、マジックテープで脱着可能なので、ルームクリーニングの際にはアメニティをセットしたポケットごと交換することで、作業の効率化を図っている可能性もありそうだ。

次回はザ・プレイスの「設備・展示編」として、このホテルのデザイン的側面をさらに紹介していく。End