第25回(平成30年度)ユニオン造形デザイン賞が現在アイデア募集中
今年のテーマは「日本のアジール・フロッタン」

公益財団法人ユニオン造形文化財団が行う学生及び実務経験10年以内の社会人を対象としたアイデアコンペが現在、応募作品を募集中だ。今年のテーマは「日本のアジール・フロッタン」。テーマについては本コンペ審査員で建築家の遠藤周平氏による下記の文章を参照してほしい。

テーマについて

アジール・フロッタン、あまり聞きなれない言葉であるが1929年にル・コルビュジエによりデザインされ、セーヌ川に100年近く浮かんできた難民避難所の通称である。元来この船は1917年に製造されたコンクリート製の石炭運搬船であったが、民間の慈善団体である救世軍の依頼により、コルビュジエが柱・屋根・水平連続窓を増設し用途を難民のための空間へとリノベーションしたものである。1929年当時、コルビュジエの元には前川國男が弟子入りをしており、このアジール・フロッタンの設計を担当していたことが知られている。

当時、コルビュジエは近代的価値観を実現する浮かぶ建築として大型客船の設計に強い意欲を持っており、唯一実現した船としてこのリノベーションでは近代建築五原則をいち早く実現するべく意欲的に取り組んだ姿が読み取れる*。コルビュジエ初期の代表作であるサヴォワ邸の完成1931年に先立ち、アジール・フロッタンは1929年末には利用開始されているが、ここに身を寄せたのは第一次世界大戦後の戦争難民やその後の世界恐慌による経済難民などである。

「日本のアジール・フロッタン」において想定する難民は我々自身である。今日の難民には、当然国境を越えてやってくる難民問題があるが、これは国の制度により対応されるべき範疇とも言える。今回のテーマが対象とする日本において、難民を生み出す原因となる我々の脅威は、南海トラフ地震や東京直下型地震そして巨大台風・ゲリラ豪雨や竜巻など極端化する気候により日常化している自然災害である。これら繰り返される自然災害において多くの避難民が生み出されるが、誰もが苛立ちを覚えるように最低限の仮設住宅は毎回間に合っていない。また、人為による経済的混乱による失業や転勤そして病気もなども含めれば、日本に居住する誰もが「安定した住居を持続する自由」を失う難民予備軍とも言える。現代において様々な理由により出現する難民、これらを柔軟に受け入れられる「日本のアジール・フロッタン」を構想してほしい。

このアジール・フロッタンは、日本の沿岸部や河川において難民を受け入れる浮かぶ避難所であり、移動の自由も有し必要に応じて災害地の沿岸に出現する。浮かぶことの可能性は、土地に縛られないことである、それは歴史や伝統的因習からも自由になる可能性を有している。コルビュジエはこの土地から自由になれることに可能性と魅力を見出していたのではないだろうか。21世紀に生きる我々の避難場所、そして隠れ家ともなるアジール・フロッタンの提案をもとめる。規模や詳細は問わない、しかし構造は可能な限り明示されることが望ましい。

以下は余談。パリにあるアジール・フロッタンは、今年2月のセーヌ川の増水により水没してしまいました。現在各方面からの支援を求めアジール・フロッタンの復活を模索しています。現在は水面下にあるアジール・フロッタンが難民問題にいち早く取り組んだ可能性を手がかりとして、日本において今日の難問を解くアイデアとして結集することができれば、アジール・フロッタンを再び浮上させることにもつながると期待しています。

*詳しくは「アジールフロッタンの奇蹟」鹿島出版会及びhttp://www.asileflottant.netを参照

審査員 遠藤秀平

上記のテーマを踏まえた提案が期待されている。ぜひ応募してみてはいかがだろうか。End

第25回(平成30年)ユニオン造形デザイン賞 公募

大賞 1点(賞金 100万円)
奨励賞 2点(各賞金 50万円)
佳 作 数点
※但し、審査の結果、賞名・賞金が変更される場合があります。前回は計11点が受賞となりました。

応募期間
受付開始 平成30年11月12日(月)
締切り 平成31年1月18日(金)
郵便または、宅配便にて送付してください。
※当日消印有効

応募資格
学生(大学生、大学院生、専門学校生)及び実務経験10年以内の社会人。但し、1989年1月1日以降生まれの方とします。共同制作の場合、代表者を決め共同制作者全員を連名してください。
注意事項
応募点数は同一年度において1申請者につき1点とします。
未発表のもの、他の顕彰を受けてないものに限ります。応募作品で、既に発表されたもの、同一、類似のものは、審査の対象から除外され、受賞発表後であっても受賞は取り消しとなります。
応募手続き
こちらのページのエントリーフォームより応募申請必要書類をダウンロードいただき、ご記入の上ご応募ください。
作品(応募作品出品票添付)
作品説明書(400字以内)
応募申請書2通(原本とそのコピー)
応募形式
1. A2(420×594mm)サイズの用紙1枚にまとめてください。
2. また、作品オモテ面右下に、「応募作品出品票」を添付してください。
3. 作品はテーマに即した形で自由に行ってください。
4. 作品の主旨を、作品説明書に400字以内にまとめてください。
5. 模型及び立体の応募は、受付けません。
作品の返却
応募作品は返却いたしません。
審査結果通知
平成31年2月初旬(予定)に受賞者のみ、文書で通知します。
受賞者の表彰
平成31年3月中旬(予定)に受賞者の表彰式を行います。
諸権利
入賞作品に係る諸権利は、応募者に帰属いたします。ただし、企業等が商品化を希望する場合は、主催者の承認のもとに、応募者と話し合いをしていただきます。また、作品の展示及び出版に関する権利は、主催者が優先保持します。
その他
1. 作品の破損等、保険、意匠登録は、提出前に済ませてください。
2. 上記に関する問題には、主催者側は、一切責任を負いません。
3. 主催者側において作品の保管中、天災や不可抗力の事態が生じて破損した場合も、主催者側は責任を負いません。