REPORT | プロダクト
2018.11.13 11:38
去る10月31日から11月4日まで東京ミッドタウンで開催された2018年度グッドデザイン賞受賞展。その会場でひときわ目立っていたのが、富士フイルムデザインセンターによる展示「デザイン標本」だ。幅5m×奥行き5m×高さ2.7mという、コンクリートボードであつらえられた巨大な“標本箱”に、富士フイルムの多彩な製品たちが収められていた。
「これはデザイン誌『AXIS』で展開しているオリジナル広告シリーズ『デザイン標本』の集大成ともいえるべきもの」と同デザインセンター長の堀切和久氏は語る。この広告シリーズはモノの美しさと所作の美しさを引き出すことをテーマに、各製品を分解して標本化し、製品がどのようなエレメント(所作や機能)で構成されているかをわかりやすく伝えるというもの。
そのコンセプトを受け継ぐかたちで、今回の展示では、製品の全体像はあえて見せず、各プロダクトの特長的な表情(部分)だけを見せることで、それぞれの個性を強調しつつ、美しさを表現した。富士フイルムの製品は、デジカメやチェキ、化粧品などのコンシューマー分野から、医療機器や産業機器、放送用光学機器などのプロシューマー分野まで多岐にわたっている。この展示では、同社を代表する29の多彩な製品が標本さながら収められたのである。
「空前絶後の色彩や機能を伴う不思議な形を持った昆虫や動物が自然界には数多く生息します。その“神の作品たち”から、私たちデザイナーは知らず知らずのうちに何らかの影響を受けているはずです。また、彼らそれぞれに表情があるように、人がデザインする製品にもそれぞれに顔があるはずです」(堀切氏)。
デザイン標本全体をとおして訴えたいのは「富士フイルムのデザインの原型とは何か」ということでもある。標本箱を覗き込むと心が踊るように、製品デザインをとおして、ユーザーにも感動を届けたい。そんな想いが込められた展示だった。