NEWS | 建築
2018.10.29 17:25
沿線住民には「レッドアロー号」でお馴染みの西武鉄道の特急車両が、25年ぶりに生まれ変わる。そのデザイン監修を務めたのは、「車両デザインは今回が初めて」という建築家の妹島和世氏。座面シートや床などのテキスタイルデザインは「すみだ北斎美術館」でも妹島氏と協業した安東陽子氏(掲載:連載クリエイターの想いを尋ねて)、車内の照明デザインは、根津美術館やポーラ美術館の照明計画でも知られる豊久将三氏(掲載:AXIS191号)、デザインのコーディネーションとグラフィックデザインはSANAAのパートナーである棚瀬純孝氏という豪華な顔ぶれが集い、西武鉄道のチームや日立製作所とともに約3年にわたってつくり上げた。
妹島氏が掲げたデザインコンセプトは次の3点。「都市や自然の中でやわらかく風景に溶け込む特急」「みんながくつろげるリビングのような特急」「新しい価値を創造し、ただの移動手段ではなく、目的地となる特急」。
「新型特急は、池袋から秩父までの大都市や住宅地、自然の中を走り、乗客も観光客から通勤客までさまざま。車両というモノとしてだけでなく、人々がさまざまなものに出会い、移動していくような体験をデザインしようと考えました」と妹島氏は語った。
特徴的なのは、周囲の景色が映り込むようなアルミ製の外観と、三次元の曲面ガラスを用いた球面形状の先頭車両。妹島氏は、少しカーブをつけた壁構造のアルミの製造は容易ではなかったこと、またクルマのように製造すると思っていたが職人の手による工程が多かったことも語った。さらに、着席した乗客の膝あたりから広がる、高さ1,350mmx幅1,580mmの大きな窓も印象的だ。妹島氏は、この大きな窓や身体を包み込むようにやや丸みを帯びた座席シートによって、リビングにいるようなくつろぎを与えることを意図している。
なお、新型特急車両の愛称は、Laview(ラビュー)。「L」にはラグジュアリーとリビングの意味を、「a」にはarrow(矢)のような速さを、「view」には大きな窓から移りゆく眺望という意味が込められている。
すでに車両は、日立製作所笠戸事業所から埼玉県小手指の西武鉄道車両基地に移動しているという。新型特急車両の運行は、新緑が芽生えはじめる2019年3月の予定だ。