中国に進出した海外企業。
その社名や商品名には素敵な当て字がいっぱい

▲ヨウイークゥ(優れた衣類の倉庫、の意)がユニクロです。Photos by Misa Nakata

中国に来た海外企業の社名や商品名を見ていると、面白い当て字がたくさんあります。今回はそのお話をしたいと思います。当て字の方法を分類すると、幾つかのパターンが見えてきます(文中のカタカナは近しい中国語の発音です)。

1. 同じ言葉を使ったまま中国語で読む

無印良品(ウーインリェンピン)、松下電器(ソンシャーディエンチィ)がそれにあたります。

上海で松下というと、今でも松下電器であると理解できる人が多いです。タクシーに乗って「何の仕事をしてるの?」と聞かれて松下だと答えると、たいてい「アンタの会社の松下幸之助という人は知っているよ」「おー、ウチには松下の冷蔵庫がある、しっかりしていて良い商品だ」などと、信頼感と親しみのあるブランドと思われていることが多いです。弊社は戦後初めて日本の大企業として中国に製造拠点を置いて仕事を始めたという背景があり、おじいさん、おばあさんからお父さん、お母さんの世代に馴染みがあり、そのため若い人たちも知っている場合が多いのです。

2. 耳で聞いた音に合わせていく

英語圏の会社名はこの仕様が多いです。頑張れば日本人でも聞き取れるかもしれませんね。ボッシュ(博世、ボーシィ)、シーメンス(西门子、シーメンズ)、ケンタッキー(肯徳基、ケンドォジィ)など。

▲スプライトはシィエビィ、飲んだときの爽快感を表す意味の名前だそうです。

3. 言葉から想起されるイメージに合わせる

スプライト(雪碧、シィエビィ)は、飲んだときのスカッとした爽快感を表現するような、冷たさと透明感を表す名前だそうです。瓶づめの栓を抜いたときのシュポッ!という音にも通じるような響きで秀逸ですね。同じ飲み物系でもうひとつ挙げますと、perrier(ペリエ)は(巴黎水、バーリーシュエィ)で、パリの水という意味の中国語で呼ばれています。何となく音も合っていますし、イメージもぴったりです。

4. それらを組み合わせる

スターバックス(星巴克、シンバークー)がそれに当たります。スター=星(シン)という意味を表す言葉と、バックス(バークー)という音とが組み合わさっています。意味と音とを会社名としてくっつけてしまう、その柔軟なセンスが素敵だなぁと思います。

▲星(スター)とバークーでスターバックスです。

5. 目指すビジョンをブランド名にする

ユニクロ(优衣库/優衣庫、ヨウイークゥ)は上記の要素をミックスさせた名前です。音としてユニクロとヨウイークゥは近いうえに、優良な衣服、というブランドビジョンのような言葉が中国の会社名になっています。安価で大量に、ということではなく、ユニクロ独自の優れた商品をしっかり売っていく、という経営指針がギュッと詰まったネーミングで、僕は素敵だなぁと思います。

最近、中国人のコピーライターとよく一緒に仕事をするのですが、中国語はピンイン(漢字の読み方をアルファベットなどで示した発音記号)のよく似た発音同士で違う意味の言葉を想起させたり、文字自体に歴史や背景があったり、また言葉と言葉の組み合わせに相性があったりということがあるそうです。

そういったことまで考えて、言葉までデザインの一環として進められたらなぁ、と考えている今日この頃です。End