情報過多な社会での癒し効果に注目
何気ない「生活音」の魅力

▲(左上)「白ごはん.com」(右上)「ウォーターサーバー分析.com」(左下)「K beauty」(右下)「ArtRoot」

色はそれぞれに意味やイメージ、心理的効果があり、感覚や感情に影響を及ぼす力があります。同じように感覚や感情に影響するものとして香りや音などがありますが、感じ方は人それぞれで、色から受ける心理的効果と似ていると思います。今回は、色や質感とは少し毛色が違いますが「感じ方の多様さと可能性」に気づかされたエピソードをお届けします。

娘が見ていた動画が、「感じ方」に注目しようと思ったきっかけでした。ユーチューブが大好きな子供たち。小学生の娘も例外ではありません。ところが最近、娘が見ているユーチューブに変化を感じる瞬間がありました。今まではお気に入りのユーチューバーが投稿する動画を見て笑ったり真似したりして楽しんでいましたが、最近は笑うでもなく、静かにあるものに見入っているのです。

聞こえてくる音もなんだか不思議な、「ぷにょぷにょ」「ムニュムニュ」「ザー」「サクッサクッ」「パチッパチッ」というような言葉では表現しにくい何とも言えない音です。何を見ているのだろうと覗き込むと、スライムをひたすらこねていたり、メラミンスポンジをただただ切っていたり……想像もしなかった素朴な動画に衝撃を受けました。

「何が面白いの?」と尋ねると、「この音がいいんだよー」と即答する娘。娘によるとこの音を聞くことで、スライムを触っている時のひんやりした感覚や柔らかさを思い出し、とてもいい気持ちになるらしいのです。

気になり調べてみると「音フェチ(耳をくすぐるように刺激する、麻薬のような音声動画につけられるタグのこと)」、「ASMR(Automous Sensory Meridian Responseの略称で、人が聴覚や視覚への刺激によって感じる、心地よい、頭がゾワゾワするといった反応・感覚のこと)」というキーワードにたどり着きました。

SNSやインターネットで検索するとたくさんのスライム動画がヒットします。日本では「音フェチ=スライム」と認識されているようですが、海外では「ASMR=スライム」だけではなく、マイクを撫でたときに発生する「ザー」という音だったり、キーボードのタイピング音や泡を泡立てたときの微かにパチパチする音だったり……さまざまなバリエーションに出会うことができます。

「音フェチ」や「ASMR」が流行っている現象にはどんな背景があるのでしょうか。もしかすると、情報過多な日常から脳を解放したいという気持ちから、何も考えなくてもすーっと入ってくるような音を脳が求めているのかもしれません。

綺麗なメロディーとは異なる魅力を持つ、マイクを撫でる音や炭酸の弾ける音、泡立てる音などの「心地よい生活音」。わざわざリラックスしようとしなくても、意識して耳をすませば身の回りにある生活音でリラックスできる瞬間が増えていくのかもしれませんね。

固定概念に捉われず脳を柔軟にしておくことで、同じように生活していても新しい切り口が見つかる。それが共感を呼び、やがてトレンドになっていくということを実感しました。私たちD-LOGも世界中の人々から共感されるような、小さな気づきを探し続けたいと思います。

皆さんもお気に入りの「生活音」を見つけてみてはいかがでしょうか?