「日本の道具 ごはん上手、うつわ上手」展が開催中
選りすぐりの品もの紹介【アイテム編】

リビング・モティーフで今年4回目となる「日本の道具」展が始まった。テーマは、「ごはん上手・うつわ上手」。今回は1ヶ月にわたる展覧会に参加してくださった作家と道具をご紹介したい。

1. 一陽窯のスパイスミル

▲一陽窯はJR赤穂線の伊部駅を出て、まっすぐ歩いて3分ほどのところにある。

説明なしだと全く、わからない。しかし、使い始めてみるとこんなに便利なものはない、というのがこの道具。

一陽窯は岡山・備前焼の窯元。備前焼と言うと、お高い茶道具のイメージがあるかもしれない。そんなイメージを覆すように、一陽窯の跡取りである木村 肇さんの登り窯の脇にはイームズの椅子が置かれている。照れ隠しながら「家をつくりたいから結婚した」というほどのインテリア好きだ。そして、大の料理好きでもある彼がつくった「スパイスミル」が今回の道具展に並んでいる。

ショットグラスほどの大きさの入れ物に、専用の擂り粉木が付いている。この片手で持てる気軽な大きさがポイント。重いすり鉢は取り出すのも、しまうのも面倒だが、これなら気軽に使える。次にポイントなのは擦りめがないこと。洗うのが楽なのだ。

使い方はまずミルにスパイスまたはナッツを入れる。片手で握り、利き手で専用の擂り粉木で押さえつけるように押す。するとびっくりするほど簡単にスパイスやナッツが潰れる。例えばクローブを1粒潰してバニラアイスに掛ける、胡椒を2粒だけつぶしてマッシュルームスープに振りかける。ナッツも飛び散らずに済み、アーモンドプードルが簡単にできる。この「少量を一気に潰す力」が、すごい。使いこなすと、食卓にいつも置いておきたくなるアイテムだ。

生き馬の目を抜くこの業界で、こんな素晴らしいものが誰にも真似されないのは、「備前焼だから」ということと「シンプルだから」ではないだろうか。硬く焼き締まる性質を持つ備前焼ならではの素地は潰すのに向いている。そして、シンプルすぎて、真似たらすぐにバレてしまうので、オンリーワンの商品になっている。
 
2.「Shimoo design」のガラス塗装の渋い器

▲海外のシェフにも好評の<浮様>の皿など。陶器とは違う質感で、料理上手の盛り付けが、楽しめる。

下尾和彦・さおり夫妻が営むShimoo designの器。「浮様(fuyou)」と名付けられたこの器のシリーズ。古木のような錆びた景色を醸し出すうつわに、釘付けになる人も多い。

下尾さんの工房に行くと、お寺から頂いたという風化した錆びた板が置いてある。こんな景色をつくりたい、と試行錯誤の末に誕生したのが「浮様」だ。

木の器は手入れの面倒さから嫌厭されがちだが、下尾さんの器は高価な塗料ゆえに使われることがまだ少ないガラス塗料を塗布することで、食べ物を置いても、色も匂いもつかない。油も平気。木なので食洗機と電子レンジは使えないが、普通に洗剤で洗える。

置いておくだけでも存在感があるが、素晴らしいのはこの料理映え。 「見たことのない質感」をぜひ、体感していただきたい。

下尾夫妻のインスタグラムより、料理の写真

▲ご夫妻で、会場に来てくださった。

3. 熊本 象さんの小鉢・オーバル皿いろいろ

▲愛らしいレンゲ、小皿、小鉢。独特の釉薬で小さいながらも存在感のある品々。

▲お父さんと象さんの品物の並ぶお店(赤水窯)の2階が工房になっている。

佐賀の陶芸家、熊本 象さんからは、かわいい小鉢、小皿、レンゲが届いている。佐賀の唐津で陶芸を営む熊本さんは、釉薬の研究に没頭した時期があり、その成果が今の作風に生きている。「ワーカーホリックなんですよ」と言うほどの仕事好き(でも本当にホリックで、倒れたこともあるそうなのでどうか気をつけて……)。

ここでご紹介しているオーバル皿だけでなく、バラエティ豊かなオーバル皿をたくさん送ってもらった。ぜひ、選ぶのを楽しんでいただきたい。

▲オーバル皿はDM掲載品の織部の抽象柄の他に、鳥の具象などもあり、楽しめる。

4. 佐藤佳成さんの茶筒

北海道・置戸町のロクロの木工作家、佐藤佳成さんからは端正な茶筒が届いている。置戸町は知る人ぞ知る、木工のまち。正確には、木工職人養成のまち。今も「オケクラフト養成塾生」が、毎年、育っているが、佐藤さんはその初期のメンバーだ。研修中、遊んでばかりいたと言うので、どんな遊びだったかを聞くと「釣りに行ったり、山登りしたり」と、ザ・北海道な答えが返ってきた。

▲茶筒とともに、かわいらしい茶匙も。

▲茶托も届きました。

研修終了から20年。確実に腕を上げて、茶筒の蓋の締り具合も気持ちいい。容量と蓋の形違いを送ってもらったので、いろいろ、見比べてほしい。

5. 和田助製作所の業務用調理道具

小売店では見かけることが少ない、ホテル・業務用厨房用品に特化したステンレスメーカー、和田助製作所のアイテムも並ぶ。シンプルで深めのトレーは、実は、カレー用。カレーのボウルとナンが乗っかった様子を思い浮かべると「なるほど!」と、思うかもしれないが、実に美しい形なので、汎用性がある。

▲機能的で、シンプルな道具は、レストラン・ホテルなどプロが愛用する品々。

心地よい握り具合のトングも、「さすが業務用」の品。いずれもシンプルな形ではあるが、プロの目に叶い、ハードな使い勝手にも耐えている品々だ。

6. conte のオイルポット

最後にオイルポットを紹介する。料理の仕方もだんだん変わってきて、昨今は揚げ物をするとき、油をそれほど使わない方が増えている。そこで生み出された、少量用(推奨300cc )のオイルポット。究極のオイルポットを探し続ける、“オイルポット難民”が待ち焦がれていた、「油タレしにくい」構造。「縁の油タレがなく、こんなストレスのない、オイルポットは初めて」という方も多い。

▲蓋を抑えて、そのまま油を注げる設計。

推奨 700cc 用の大サイズもあるが、こちらは出汁漉しとしても重宝する。ステンレスは冷えやすいので、麺つゆをつくって、冷蔵庫で冷やすことにも向いている。

このconteのステンレスボウルに関する詳しいストーリーは、iFデザインアウォード受賞について綴った回を読んでいただきたい。

《前回のおまけ》

▲AMCCの最終日は東川町の「DEMETER」の美味しいパンでした。実はAMCC第10回目の実行委員長の小助川さんの奥様の営むパン屋さんです。

▲旭川の家具工場に行くと必ずお目にかかるのが、このだるま。その正体はボンドの容器です。

「日本の道具 ごはん上手、うつわ上手」展

会期
2018年9月15日(土)〜10月15日(月)
会場
リビング・モティーフ 1F店内

トークイベント「ごはんの炊き方のうそ、ほんと。」

日野明子×ごはん同盟 しらいのりこ&シライ ジュンイチ
「おかわりは世界を救う」という理念のもと、ごはんをおいしくいただくための方法を日夜研究し生み出しているごはん同盟さんと、日本の作り手と道具に精通した日野明子さんに、ごはんをおいしく炊く方法についてお話ししていただきます。ごはん同盟さんによる新米ごはんとおかずをつまみながら、楽しい秋の夜をお過ごしください。

日時
10月4日(木)19時半〜21時
予約制
定員30名 参加費:3,000円(米つぶ柄の手ぬぐい付)
お申し込み
お名前/ご職業/参加人数をご記入の上、メールにてお申し込みください。