常に定刻の20分前に離陸する?
国営航空で周遊したラオスの旅【前編】

前回はミュンヘンで必見のミュージアムの話をした。このとき、ドイツまでマイルを使った特典航空券で行こうとしていたのだが、結局、足りないマイルをクレジットカードのポイント移行で補うのが間に合わず、正規で航空券を取ったのだった。

5月のある日、ふと、ラオスの首都ヴィエンチャンまで、特典航空券を使って行けるか調べてみた。台湾や韓国など気軽に行けるところは競争率が高く、特典用の割り当ての席は常に一杯。しかし、ラオスのように必要マイル数が多いと案外ハードルは低い。ヴィエンチャンにはバンコク経由で行く。行きは乗り継ぎの関係で丸1日かかるが、帰りは夜に現地を出て、朝7時に羽田に着くから、仕事の合間に行けそうだ。すでに1ヶ月切っていたが、席も余裕があった。「何事も自分ひとりで決められるのが、個人事業主の利点。そうだ、行ってしまおう」と、友人を誘い(彼女はご主人のマイルでめでたく行くことができた)、ラオス行きのチケットを無事に入手したのだった。

国内は慣れたものだが、海外の旅はずぶの素人。チケットを取ったはいいが、道中の行程を考えるのはひと仕事だ。ラオスという国のスケール感も国内の移動手段も何もわからないなか、ヴィエンチャン、世界遺産になっているルアンパバーン、知人が住んでいるルアンナムターと行き先を欲張ったところ、3日でラオス国営航空に4回乗る、というリッチな国内周遊を決行することになった。調べると、ラオス国営航空はリコンファーム必須(リコンファーム、懐かしい響き)。国内便でも2時間前に空港に行くように、と書いてある。時間は無駄な気はするが、背に腹は代えられぬ。

▲結局、ホテルの人のアドバイスで1時間前に飛行場に到着。リコンファームはしなかった。

海外でまず、慣れなければならないのはお金の単位だ。ラオスはキープという。1万キープが130円程度。うっかりお札の写真を撮り損ねたが、0があまりにも多いと、10万キープと1万キープを間違えそうになる。小銭はない。(ヴィエンチャンのワッタイ国際空港では入国審査を経た20時過ぎでも両替はできた。)

▲場所によっては100単位は切り捨てられてしまうので、希少価値のある500キープ札。

今年からヴィエンチャンでは、空港から市街地への巡回バスも動き始めたそうだが、到着時間が20時を過ぎていたため、タクシーで宿へ向かう。この宿は、寝るためだけのつもりだったが、旅の最後にこの宿泊を幸運に思うことになる。

宿に着くなり、翌日は9:10発のルアンパバーン行きの飛行機に乗らねばならない旨をフロントに伝えた。「2時間前までに空港到着」という公式ホームページの通りに行動すると7時前にホテルを出なければならないが「7時45分に出れば十分」と言われ、「朝食はありつける」とほっとした。翌日、予定通り8時頃に国内線のターミナルに着き荷物を預けると、すぐに案内のアナウンス。着席して数分後、飛行機は何事もないように、定刻の20分前!に出発した。

▲4回乗ったが、どの操縦士も着陸が素晴らしくうまかった。

▲民族衣装の制服で、非常時の対応を説明する美人の客室乗務員。

50分の飛行ののち、世界遺産の街、ルアンパバーンに着く。雨季と聞き、雨具をしっかり用意してきたが、幸いにして好天に恵まれる。

ヴィエンチャンはやはり都市だった。ルアンパバーンののどかさに圧倒される。溢れる緑と川と寺院。コンパクトな街で、どのガイドブックも「レンタサイクルで回る」ことを勧めている。

▲竹でできた橋。高所恐怖症にはまず通れないスリリングな橋。

街中の緑も豊かだが、食卓もすごい。友人が探してくれた、看板のない定食屋さんのカオソーイと呼ばれる麺料理には、贅沢なほどの香草がつく。辛いが、これを山ほど入れると、なんともいえない緑の香りで、体が満たされていく。

▲20000キープのカオソーイ。山盛りの緑の写真を撮り損ねてしまったが、ハーブの高い日本から考えられないほど、贅沢な盛り方だった。

食事のあと、レンタサイクルで街を回る。中心から少し入ったところにある民族資料館、スーパーに立ち寄る。一度、宿に戻り、ひと休みしてから出ると、雲行きが怪しい。雨具を用意し、靴を長靴に履き換える。10分後には信じられないような土砂降りになった。これが雨季か……、とカフェで待機しながら、呆然とする。この繰り返しがあっての、あの昼の緑の野菜の豊かさか、と身を以て感じたのだったのだった。その後小雨になったので入ったレストランも、豊かな食材に溢れていた。この街にいたら、野菜不足には決してならないだろう。

▲晩御飯は多く頼みすぎてしまったら、持ち帰り用に包んでくれた。

翌日は7:40発の飛行機に乗らねばならない。悔しいが、朝ごはんは食べずに空港へ。今日も、飛行機は定刻の20分前に飛び立つ。暑い国の人がのんびりしている、と決めつける人がいるが、ラオス国営航空には当てはまらない。

ワッタイ空港でルアンナムター行きの飛行機に乗り継ぐ。パスポートコントロールのスタッフが前日と同じ人で「あれ?」という顔をされる。そりゃそうだ。ほぼ24時間後に同じ空港から飛行機に乗る人なんて、そうそういないだろう。そして昼前にこの旅で3つ目の空港、ルアンナムター空港に着く。こう言ってはなんだが、おもちゃのような空港だ。

▲荷物の受け取り場所。これをみただけも、ミニチュア感が一杯。

ルアンナムターでは、知人に迎えに来てもらう。この街での1泊が旅のクライマックスとなるのだが、後編に続く。

前回のおまけ》

前回のミュージアムレポートで紹介した、ミュンヘンのピナコテークデアモデルネ にも展示してあった、エルンスト・ガンペルの2000年にMDSG(Miyake Design Studio Gallery)で開かれた展示会のリーフレット。18年前の展示会の物が残っていて、自分でもびっくりする。