皆さん これなんだかわかりますか? RPF(Refuse Paper & Plastic Fuelの略)といわれる廃棄物由来の燃料です。最近、私たちの業界では、この燃料に注目が集まっています。なぜか? ニュースでも大きく取り上げられてきていますので、ご存知の方も多いと思いますが、中国がプラスチック素材、厳密には原材料は除きますので、再生プラスチックといわれるモノの輸入を全面禁止にした影響からです。全世界の廃プラスチック類の80%以上を吸収していたといわれる中国ですが、日本のみならず、アメリカ、EUからの廃プラスチックの流れが遮断されたダメージは計り知れません。しかし、以前にも書きましたが、あんな状態のモノなので、中国の環境を考えれば止めて当たり前です。外国の産業の尻拭いをやらされていたようなものですから。
では、あの状態のモノは、本来どうするべきなのでしょうか? 頑張って分別するという選択肢もあるかもしれません。通常は、RPFから燃料を製造します。サーマルリサイクルと言われるものです。写真は、ナカダイにあるRPFを製造する設備と原料の一部です。リサイクルというと、再生素材として、別の製品をつくる原料にするマテリアルリサイクルを想像するかもしれませんが、その場合は、素材ごとに完璧に分別をしなくてはなりません。
しかし、現実には、そもそも複合材であったり、シールやガムテープがなかなか取れなかったり、汚れていたりといろいろです。つまり、中国に運ばれていたような状態です。そんなプラスチック類は、木くずや紙くずなどを混ぜて、石炭や重油などの代わりに使用する代替燃料、つまりRPFとして、サーマルリサイクルをします。
とんでもない量です。RPFの壁です。いろいろ努力はしたのですが、わかりやすい写真を撮るのが難しい。RPFはボイラーの燃料として使用したり、タービンを動かす動力として使用したりします。規模にもよりますが、1時間に数十トンも使用する場合もあります。RPFがなければ、天然資源である石炭などを使用することになるので、RPFを使うことは廃棄物の有効利用にもなり、天然資源の使用抑制にはなるので一石二鳥です。
しかし、課題として“品質”があります。廃棄物を有効に利用しようとするときの課題は、どんなリサイクルでも、プロダクト化でも同じで、品質です。わかりやすいひとつの例は、代替燃料としてのカロリーを満足しているかということです。石炭はおおよそ6,000カロリー/kgと言われ、もちろん、RPFも同等程度のカロリーが必要です。一般的なプラスチックが10,000カロリー/kg、紙や木は4,000カロリー/kgなので、うまく混ぜて、写真のようなRPFを製造します。しかし、十分なカロリーがあるか、品質をチェックすることがひじょうに難しいのです。見た目ではわからず、サンプル検査しかありません。しかし、1時間に数十トンも使用するので、日々の受け入れ量は数百トンにもなり、検品はひじょうに困難です。
話は戻って、これまでもこういう課題がありつつ、廃棄物を取り扱う私たちの業界としても、代替燃料として使用してくれる会社とコミュニケーションをとりながら、何とか品質を保証し、安定的な運用してきましたが、ここにきて、今まで中国に送られていて見えていなかった大量の、かつ粗悪なプラスチック類が、国内で流通しはじめています。日本のみならず、世界中で、行き場を失った分別されていないプラスチック類をどう国内で処理するか、再構築をしなければならない状況になっているのです。
2018年6月22日(金)、日本デザイン学会第65回春季研究発表大会にて、「“捨てる”をデザインする~循環を前提としたモノのトレーサビリティ~」と題して、基調講演をします。学会の詳しい情報はこちらです。
すでに、製品そのものだけではなく、それに付随するものまで含めて、使用した後まで面倒を見なければならない時代になってきています。ものを生み出す企業としては、避けては通れないこの課題に対し、社会の仕組みを構築し、解決していくビジネスを皆さんと考えたいと思っています。