「観光」という感覚が乏しいためか、いわゆる名所旧跡に興味がなく、国内外問わず町歩きが中心になる。ただし、数少ない海外旅行の経験から、美術館や博物館はたいてい面白いと分かり、これだけは調べて行くことにしている。(ちなみに日本国内では、“民藝館”や“民俗資料館”があったら、行くことをお勧めする。どんなに小さな館でも、つくりものでない面白さがあるはずだ。 ただし、どちらも“民”と“館”がつくが、相互の関係はない。民藝館は柳宗悦の思想に基づいて集められ、民族資料館はその土地の民具を集めたものであることを、付け加えておく。)。
3月に、iF Design Awardの授賞式のために滞在したミュンヘンでは自由時間に3つの美術館・博物館を訪ねたが、いずれも素晴らしかった。「ミュンヘン、観光」のワードで検索して出てくる場所は、たいてい決まっているが、「私の観光トップ3」を紹介したい。
Pinakothek der Moderne(ピナコテーク デア モデルネ )
Pinakothek der Moderne(ピナコテーク デア モデルネ ) は合わせて5つの館(Pinakotheke(新旧絵画館)、Museum Brandhorst(ブランドホルスト・ミュージアム)、Sammlung Schack(シャック・コレクション)から成り、それぞれの1日券や共通チケットなどもある。ウェブサイトによると「20世紀と21世紀の芸術、建築、デザインを集めた世界最大のミュージアムに数えられる」とか。
この美術館を検索すると出てくるのはほぼ、この場所だ。
たしかに、この場所に立つと、この展示の美しさ、ユニークさが伝わる。ただ、「これが展示のすべてなのかも?」と思ってしまうほど、この写真しか(私の検索能力では)出てこない。しかし実際の館内は、さながら三次元のデザインの教科書だ。
企画展「HELLA JONGERIUS & LOUISE SCHOUWENBERGーBEYOND THE NEW」では、家具が横に倒されていた。普段は見られない、隠れた部分を見ることができ、デザイナーの小野里奈さんは「仕組みがわかる」と、大興奮していた。
上記のデザインのエリア以外でも、企画展が充実している。訪れたときは偶然にも田中一光さんの「顔」のポスターを特集した企画展が開催されていた。そのほか、スケッチの特集も美しかったし、世界の都市を面白い視点で見る企画展「Does Permanence Matter? Ephemeral Urbanism」を見られたことも、収穫だった。
Deutsches Museum(ドイツ博物館)
技術・科学の国立博物館で、子どもがいろいろ体験できる場所になっているらしい、ということはわかったが、とにかく広い。オスカル・フォン・ミラーというドイツの技師が創立したそうだが、素晴らしい財産をつくってくれた、と極東から感謝したい。
帰国時間が迫ったわれわれは、「窯業・ガラス」などのフロアに急いだ。そこには、マニアックとしか言いようがない、細かい技術の説明が延々と続いていた。一般の人が「窯業」から思い浮かべるのは食器がほとんどだと思うが、産業規模から考えると、食器はごく一部だ。碍子(がいし)やレンガなども丁寧に説明し、模型も丁寧につくってある。この模型の規模が半端ではない。
一般的には飛行機などが有名な博物館ですが、ものづくりに興味のある人は、この3階だけでも見て欲しい。ミュージアムショップも充実している。
Bavarian National Museum(バイエルン国立博物館)
最後は正統派の美術館(博物館と訳されているが、私の感覚だと美術館)。コレクションされているものは、時代は中世からアールヌーボーまで。品は象牙、金銀、グラス、陶磁器、キリスト教美術、絵画、家具、楽器、彫刻、テキスタイル、時計と理化学道具、民俗、武器、と幅広い。
建物も素晴らしい。ものだけなく、空間あっての美術館だと感じさせる。
しかし、とにかく広く、つくりも複雑なので、侮っていると回りきれない。心して訪ねることをお勧めする。
解説もせず、ただただ、「素敵を押し付ける」ような、お粗末なご紹介になったことを最後にお詫びする。しかし、そもそも美術館・博物館は実際に見ないと意味がない。この3カ所を見るために、もう一度、ミュンヘンに行きたいほど良かった。
今回は、ただただ素晴らしく、興奮して帰ってきてしまったが、いつか再度訪れたら、その時は、もう少し説明できるような見方をしたい。
《前回のおまけ》
宮ノ下のお土産。
川邊光滎堂。
こういうパッケージ、本当にすごい。