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2018.05.07 16:21
4月2日、一般社団法人 渋谷未来デザインが設立された。この組織は渋谷区、大学、企業、そして住民やこの街に集う人々によるオープンイノベーションによって、渋谷の可能性をデザインするためのプラットフォームとなることを目指す。4月25日に行われた設立記者発表会では、代表理事を務める小泉秀樹(東京大学教授)が趣旨やプランについて説明した。
産官学民連携でビジョンを考え、アクションを起こす
渋谷未来デザインは、渋谷区が2016年10月に策定した基本構想に沿って設立された産官学民の連携組織だ。「都市のセンター」としてのあるべき姿を模索すると同時に、渋谷に対する人々の愛着、ブランド力を高めていくため、行政だけでなく、住民、企業、学校、個人などさまざまな主体が共創しながら取り組む。渋谷区が抱える課題の解決というよりは、20年後の渋谷の可能性やビジョンを考え、そこに向けた実験や事業を推進していくことが目的だ。
体制は、さまざまなスキルをもつ若い世代のメンバーが集うほか、「Future Designer」と称し、林 千晶(ロフトワーク代表取締役)、夏野 剛(慶応義塾大学大学院政策・メディア研究所特別招聘教授)、齋藤精一(ライゾマティクス代表取締役)、佐藤夏生(EVERY DAY IS THE DAY共同代表)ら7名の識者が各事業のアドバイザリーとして参加する。
また、参画パートナーとしてNTTドコモや京王電鉄、東急電鉄、ソニー、パルコ、みずほ銀行といった14社もそれぞれ主体となってプロジェクトのアイデアを出していくという。
長谷部 健 渋谷区長は、次のように期待を語る。「渋谷という街は、ファッションや音楽、さまざまなカルチャーをつくり続けてきた。それは民間の方々ががんばってきた。『行政ができることは規制緩和くらい』というのが今までの考え方だったが、これからは互いのリソースをかけ合わせて、一緒になってビジョンやアイデアを創発していきたい。この街にもっと多様なクリエイティブやエンターテインメントが集まってくれば、ニューヨークやロンドンに負けないような世界的なクリエイティブシティになれるのではないか」。
テクノロジーやスペース活用の実験場に
渋谷未来デザインが取り組む事業カテゴリーは次の5つ。
・都市体験デザイン(例えば、先端技術を活用して今までにない体験をつくる)
・空間価値デザイン(区や民間が所有する空間を活かし、経済的・社会的価値を高める)
・市民共創事業デザイン(市民の発意をもとに行政や企業が協力し、新しいアイデアを実現する)
・シティブランド創造事業(ニューヨークやロンドンに並ぶ文化拠点となるための事業)
・都市・大学連携事業(渋谷に限らず連携事業を行っていく)
そのうえで、2018年度に予定されているキープロジェクトは以下のとおりだ。
1.創造文化都市渋谷の実現に向けた計画策定
2.最先端テクノロジーの社会実証実験
3.「ササ・ハタ・ハツ」
4.パブリックスペースの利活用
5.DIVE Diversity Summit
6.公式スーベニア。渋谷区発の商品開発
7.クロスセクターで多様なアイデアを創出
例えば、「2.最先端テクノロジーの社会実証実験」に関して、参画パートナーのNTTドコモが2020年に本格的に商用開始する5Gを使った実証実験を行いたいという意欲を見せている。ソニーやアカツキもそうした新しいインフラを活用しながら、まちのなかに自社のコンテンツをどうインストールするかを模索する。
「3.ササ・ハタ・ハツ」は、いわゆる甲州街道沿いに広がる、笹塚、幡ヶ谷、初台のこと。これらは渋谷区で最も居住者の多い地域で、個性的な商店やクリエイターも集う。住民にとって暮らしやすく、かつ渋谷の新たな一面が生まれるようなビジョンを策定していくという。
「4.パブリックスペースの利活用」には、公有地だけでなく民間が所有する場所も含まれる。予定では来年度にデザインコンペを実施し、広くデザイナーや建築家からスペース活用のアイデアを集めるそうだ。
小泉代表は、「まだ発足したばかりなので、具体案やKPIなどはこれから」としながらも、「誰にも見えない未来を皆でつくっていく取り組み。企業だけでなく、区民や団体から多様なビジョンやプロジェクトを提案してもらい、それに対して臨機応変に柔軟に動いていくことが大事だ。提案をそのまま実行するのではなく、いかに新しい渋谷の未来をかたちづくるか、という視点でブラッシュアップしていくのがわれわれの役割だと思う」と語った。今後の発信や具体的な事業内容に注目していきたい。