前編に引き続き、後編では、第2ターミナルの大きな特徴となっている「プロモーション・ゾーン」を紹介していこう。デジタル・アミューズメントパーク的なこのスペースは、ハブ空港ならではのトランスファー(乗り継ぎ)の際に不可避な待ち時間を楽しく有意義に過ごしてもらうことを目的に設けられている。
まず、プロモーション・ゾーンへの通路は、突き当たりに光のアートが表示され、天井のLEDと床の反射を利用して映し出された旅客機のモーショングラフィックスが、来場者を奥の空間へと導いてくれる。そして、右方向に曲がると、空港の巨大なジオラマモデルが設置されており、そこに上方からのプロジェクションマッピングによって、さまざまな情報がオーバーレイされていく。一昔前ならば、模型の各所に豆電球を配置して、順番に光らせていくような展示となるところを、最新技術を駆使した演出によって、はるかに楽しめるものとなっている。
光のアートのところで左方向に曲がると、そこが待合スペース。ここでは、LG電子製の自立型掃除ロボットと案内ロボットが稼働しているはずだったが、残念ながら訪れたタイミングでは両方ともに充電中で、実際に動いているところを見ることはできなかった。どちらも、適度に抽象化された民芸品の人形のようなフォルムをしており、案内ロボットにはLG電子が得意とする大型の曲面ディスプレイをサイネージ用途で採用するなど、自国製品のショーケース的な役割も果たしている。
このスペースの椅子はアート作品を兼ねたつくり付けで、そのモチーフは空港で見かけるさまざまなアイテム(時計、スーツケース、旅客機のウィングとジェットエンジン、バゲージカルーセルなど)で構成されていた。また、鮮やかな水色は大韓航空のテーマカラーを意識したものと考えられる。
また、その後方には、空港で見かける人々をレーザーカット&刻印されたアクリルで表現したインスタレーションがあり、その中に先ほどのロボット2体も含まれているのが微笑ましい。
さらに、それと隣接して、3Dプリントされたフィギュアと透過型ディスプレイを使った別のインスタレーションもあり、こちらは空港内で起こったエピソードを紹介するコーナーである。例えば、亡き夫の法事のために、供える食べ物を持ち込もうとしたおばあさんが税関職員に止められ、規則にしたがって食品を没収された。しかし、困っているおばあさんを見かねた職員が、墓地の近くで同じ供え物を用意してくれるレストランに手配して事なきを得たといった、ちょっといい話的なストーリーがデジタル紙芝居のように展開される。これがエピソードごとにいくつかのボックスに分かれて展示されており、見ているうちに時間をつぶせるという仕組みである。のんびりとした見せ方は、高齢者にもわかりやすい展示を目指したためと感じられた。
そして、特に子どもたちに人気があったのが、体感型のVRアトラクション(コンテンツは空港施設の紹介)と、瞬間的なジャンプやポーズを多視点カメラで撮影したバレットタイム動画を指定したメールアドレスに送信できる、次世代記念写真のコーナーだ。無料なためか、どちらも列ができるほどで、場合によっては並んでいる間に出発時刻が来てしまうのではという余計な心配をしてしまった。
このような待ち時間を飽きさせないための施設は、ハブ空港ほど重要な要素となっていくものと思われ、仁川国際空港第2ターミナルは、他の手本となる要素がいろいろと詰まった楽しめるエアポートなのだった。