「ヤマハ×ヤマハ発動機」だからできること
合同展示イベント「Breezin’」が開催 2018年4月9日まで

▲ヤマハ銀座ビル1Fで開催中の展示「Breezin’」.「YPJ」「Venova」ともに「屋外でカジュアルに楽しんでもらえるもの」として、店内に仮想的な地形をつくった。

ヤマハ銀座ビルで、ヤマハとヤマハ発動機の2社による合同展示イベント「Breezin’」が開催中だ(4月9日まで)。「扉の外に出てみよう」というコンセプトのもと、3月に発表された電動アシスト自転車「YPJ」の最新モデルと、昨年グッドデザイン大賞に輝いたカジュアル管楽器「Venova(ヴェノーヴァ)」をひとつの空間にコーディネート。春の風に吹かれ、どこかに出かけたくなるような活動的な気分を表現している。これまで、2社のデザイン部門は「Two Yamahas, One Passion」をテーマに、コンセプトモデルやイベントなどの共同プロジェクトをいくつも展開してきた。今回は実際のプロダクトを通じて、その背景にある精神性やセンスの共鳴を試みるというもの。組織や分野は違っても、「ヤマハ」というひとつのブランドとしてどういったシナジーをつくり出していくのか。そんな、2社の未来に向けた問いかけでもある。両デザイン部門トップと、「YPJ」「Venova」の担当デザイナーに話を聞いた。

▲2015年「project AH A MAY」では、互いのデザインフィールドを交換して相互にデザイン提案を行った。

4年目となる、2社デザイン部門による共同プロジェクト

——両デザイン部門による共同プロジェクトは、2015年「project AH A MAY(プロジェクト アーメイ)」や2016年「&Y(アンディ)」など、さまざまな内容で行われてきました。今回の展示はどういった位置づけになるのでしょう。

川田 学氏(ヤマハ デザイン研究所 所長) もともとデザイン部門の対話から始まったものが、技術部門のコラボレーションにも発展し、今は実際の商材を使って「共通のターゲット層にアプローチできないか」という段階に入っています。そのひとつとして3年前から合同デザイン展を行っていて、2016年はバイクとエレキギターを組み合わせて展示しました。今回の「Breezin’」は電動アシスト自転車と管楽器の組み合わせになります。

▲2016年「&Y」は、2社のデザイン部門が共同でコンセプトモデルのデザインを行った。

▲「Two Yamahas, One Passion」のデザイン展示(2016年)。ヤマハのギター発売50周年を記念して発売された新シリーズ「REVSTAR」とヤマハ発動機の「BOLT C-spec」「XSR900」をワイルドなガレージの世界観でコーディネートした。

長屋明浩氏(ヤマハ発動機 デザイン本部 本部長) 「Breezin’」の直接のきっかけとなったのは、2017年の東京モーターショーです。実は2015年の東京モーターショーから意図的に楽器も展示してきましたが、2017年はさらに踏み込んで、ヤマハ発動機が楽器にルーツを持つブランドであることをしっかり打ち出したんです。会場の中心に楽器を置き、そこからヤマハの世界が広がっていくようなイメージにしました。そのときに並べたのがYPJとVenova。それを見て、何か共通するもの、「これぞヤマハ」と言えるような直感があったんですね。それが今回の展示へとつながった。

▲2017年東京モーターショーのヤマハ発動機のブース。音響システムもすべてヤマハによる。空間にあしらったジグザクのパネルは、ヤマハ発動機がグローバルで使用している展示用モジュール「ヤマハブースモジュールシステム(BOOMシステム)」。運搬・設営しやすく、商品イメージに合わせた空間造形が可能だ。

会う機会は少なくても、強く意識しあっている

——実際にできあがった「Breezin’」の展示を見て、どう感じましたか。

長屋 僕らが協働するときは割と直感的に企画を決めていくところがあるんです。お互いにあまり説明しなくても、ヤマハらしい感じができあがっちゃう。それで今日思ったのは、「縦の空間」ということなんです。YPJもVenovaも、どちらも縦の商材なんです。二輪ってあまり重心を下げるとリーンできないから乗りにくいんですよね。ある程度縦に上がっていく方が安定する。楽器も人間と一緒になって立ち上がることで初めて演奏することができます。それらがヤマハ銀座ビルの吹き抜けの「縦の空間」に入ることで、ひとつの世界がつくられた。

川田 外からウィンドウを眺めると、吹き抜けも、縦方向に設置した幾何学的なパネルも、あたかもこの状況のためにつくったのではないかと思うような雰囲気になっています。ここに置かれているひとつひとつのアイテムが、これまでに両ヤマハで行われてきたことをリフレクトしているように思います。

——このようなプロジェクトを通じて、2社のデザイナーがコミュニケーションする頻度というのは増えているのですか。

川田 頻度は多くはありません。でも、両社員が会うチャンネルは増えていると思います。ミュージシャンが会って即興でセッションするような感じ。普段はそれぞれの持ち場があるんだけれど、会ったときにはぴたっと息が合うような感じがありますね。また、フィジカルに会う機会は少なくても、例えばデザイン誌「AXIS」のシリーズ広告を通じてお互いにどんなアイテムを掛け合わせるかを考えたり、「あちらはこういう切り口できたか」と意識するような機会はあります。

▲デザイン誌「AXIS」のシリーズ広告。現在発売中の192号より。

新しい自転車の楽しみ方を提案する「YPJ」

——ヤマハ銀座ビルという「楽器のビル」で、電動アシスト自転車が展示されるのは初めてのことです。YPJを担当するデザイナーとして、ヤマハの楽器からインスピレーションを受けることはありますか?

北山亮平氏(ヤマハ発動機 デザイン本部 デザイナー) もちろんあります。例えば、当社のデザインで力を入れているCMFG(Color, Material, Finish, Graphic)ですね。楽器って木材や金属などが使われて、いたる所にCMFのヒントがあるので、そういった要素を取り入れてショーモデルをつくったり、製品にエッセンスの一部を使うこともあります。他社メーカーにはない、ヤマハ発動機ならではの強みだと思います。

——今回の展示は、一般の方向けにYPJの最新モデルをお披露目する初めての機会となります。

北山 ヤマハ発動機としては初めての「E-BIKE」というジャンルになります。ヨーロッパ、アメリカではレースが開催されて盛り上がってきているなか、日本では今年が「E-BIKE元年」と言われています。最新モデルについては、デザインもさることながら機能面でもかなりいいものができたと自負しています。

▲新モデル4種のうちのひとつ、マウンテンバイクの「YPJ−XC」(2018年7月18日発売予定)には、最新のドライブユニット「PW−X」を搭載。かつてないパワーモードで、ライダーの思いのままにパワフルな走行が楽しめる。また軽快なハンドリングはヤマハ発動機の特長でもあり、こだわった点だ。

——本展のコンセプト「Breezin’」のなかでは、製品をどう見せたいと考えましたか。

北山 昨今、自転車はどんどん本格的になって、なかでもロードやヒルクライムなどの分野は敷居が高くなっています。でも、ビギナーや体力に自信のない人でも、そうした自転車の楽しい部分を味わえるのがE-BIKEのいいところ。なので、今回の展示では、「自分にもできそうだ」「やってみたい」と思えるようなカジュアル感が伝われば嬉しいです。

長屋 ヤマハ発動機の電動アシストは、1993年に「PAS」が発売されてから今年で25周年なんです。それまでにない乗り物を発展させ、定着させていく歴史でした。YPJは、25年前のPASのような「新しい乗り物」という感覚を彷彿とさせます。電動アシストの第2フェーズに入ったのかなと思っています。

生まれたばかりの「Venova」は100年先を見据えている

——Venovaについては、今回の展示はいかがですか。

川田 Venovaは、「カジュアル管楽器」という呼び方をしているんです。通常の管楽器はパーツが多いうえに大きく、重たく、フォーマルなイメージがありますが、Venovaは軽くてまる洗いでき、気軽な感覚で使える。管楽器はウィンドインスツルメント(風の楽器)とも言われ、心地よく抜けた空に音が上がっていくようなイメージがあるので、まさに「春、風、屋外」といったキーワードにぴったりだし、これを携えて自転車に乗ってどこかに行きたくなるような気持ちになりますよね。

▲東京モーターショーでも展示された、Venovaのスペシャルコンセプトモデル。Venovaのサーフェスデザインに、ヤマハ発動機のコーディング技術を取り入れたもの。

——Venovaは2017年度グッドデザイン大賞を受賞し、3月27日からはGOOD DESIGN Marunouchiでも記念展示が行われます。開発プロセスが紹介されるそうですね。

辰巳恵三氏(ヤマハ デザイン研究所 デザイナー) 管楽器は何百年という時間のなかで、ようやく一般的な楽器として定着していったものです。Venovaはまだ生まれたばかりの楽器なので、普及にはまだまだ時間がかかるかもしれません。でも、これを演奏する愛好者の方が少しずつ増えていってくれたらいいなと思っています。

——新しいスポーツや音楽の文化をつくっていくという意味でも、この展示を通じて両ヤマハの共通点が見えてきます。

長屋 僕らはやっぱり、人間の成長に貢献することが、ひじょうに大切な要素だと思っているんです。二輪はある程度の技量がないと乗りこなせません。乗り手はそれを練習して克服し、自分自身が成長することに面白さや意味を感じるのです。それは楽器でも同じではないでしょうか。ものを所有することが嬉しいという時代から、個人の心の喜びを大切にする時代に入ってきた。そのようなタイミングに、YPJやVenovaのような商品が同時に出てきたということを見ても、両ヤマハの価値観の共通性が語れると思います。

川田 長屋さんのバイクの話を聞いていると、「それは楽器も同じなんだよなあ」といつも思うんです。はじめに目的があってそれを達成したらおしまいというのが“USE”の道具であるとすれば、何かができると次の何かに挑戦してみたくなる、つまり目的が上書きされていくのが“PLAY”の道具なんです。
ブランドについて話すときによく出てくるのが「自覚と期待値」という言葉。ブランドというのは、誰かに「あなたはこういうものである」と言われてやっと自覚する面があって、実はそれこそがお客様から見たブランドに対する期待値でもあるわけです。われわれはそれに応えるために次の目標が見出し、成長していく。両ヤマハの共同プロジェクトを通じて、留まることのない成長のスパイラルを一緒に盛り上げながらつくっているという感じがします。

―ありがとうございました。End

▲「Breezin’」会場にて。左から、北山亮平氏、長屋明浩氏、川田 学氏、辰巳恵三氏。

ヤマハ発動機・ヤマハ合同展示イベント「Breezin’」

会期
2018年3月14日(水)~4月9日(月)  11:00 ~ 19:30
※展示時間はヤマハ銀座ビルの営業時間に準じます。
※3月29日(木)は18時まで。3月30日(金)は棚卸のため閉店。
会場
ヤマハ銀座ビル1F/ポータル(東京都中央区銀座7-9-14)
https://www.yamahaginza.com/access/