新世代の紙が可能にした新たな花の美
「ペーパーエデン・ウィズ・ナオロン」。
3月31日まで表参道で展示

「ナオロン」とは、山梨県の和紙メーカー大直が木材パルプとポリオレフィン繊維(ソフトタイプの場合)、またはポリエステルリサイクル繊維のみ(同じくハードタイプの場合)を原料に、伝統的な和紙漉きの製法を組み合わせてつくり出した、風合いと耐久性を兼ね備えた新世代の紙である。ナオロンという名前に聞き覚えがなくとも、工業デザイナーの深澤直人氏のデザインとの出会いから生まれた日常生活品シリーズの「SIWA|紙和」ならば、実際に使われている方も多いのではないだろうか。

そのナオロンが、特徴を生かせる新たな領域として選んだのがペーパーフラワーだ。3月31日(土)まで東京・表参道のMoMAデザインストアで開催中の国内初お披露目となるイベントでは、独自の感性で花の可能性を見つけ、花にまつわるさまざまな創作を行うエデンワークスとの協業から生まれた「ペーパーエデン・ウィズ・ナオロン」がウィンドウを飾り、販売も行われている。

精巧なアンドロイドほど、人間は僅かな差を認識して違和感を感じるように、造花も精緻であるほど生花とは異なる虚構が目につくことは多い。それならば、花を手本としながらも、異なる美、新たな美を目指すほうが潔くもあり、互いの美しさを競い合える。

「ペーパーエデン・ウィズ・ナオロン」は、単に型抜きや染色されたナオロンを機械的に花の形にまとめるのではなく、それぞれの花のルールに従いながらも手作業で形作られている。これは、ちょうど「SIWA|紙和」シリーズのシワ加工や縫製が職人の熟練技によって行われるように、1点ずつに違った表情を与えるために必須の工程として採り入れられた。そして、種類によっては、花弁表面のパターンを手描きによって仕上げたり、花芯部分がドライフラワーになっているものも含まれており、生花を選ぶのと同様に、出会いと好みによってお気に入りの花を見つける楽しみがある。

ようやく春めいてきた季節のなか、表参道に足を運ぶ機会があれば、ぜひご自身の目で、新たなペーパーフラワーの美しさを確かめていただきたい。End