パリ「メゾン・エ・オブジェ」2018年1月展のみどころを
いち早く紹介!

世界のデザインシーンの動向を占うデザイン見本市。ケルンの「imm cologne」と並び2018年の先陣を切って開催されるのが、1月19日(金)からパリで始まる「メゾン・エ・オブジェ」です。みどころ満載の展示から、日本のメーカーやクリエイターの手がける作品をいち早くピックアップし、紹介します。

▲1月のメゾン・エ・オブジェで発表されるnendoとbunacoによるアンプ内蔵の無指向性スピーカー。

ちょうど3年前のメゾン・エ・オブジェ1月展。このときデザイナー・オブ・ザ・イヤーに輝いたのが、佐藤オオキさん率いるnendoでした。受賞にあわせて行われたプレゼンテーションでは、「ツブツブ」「スベスベ」「ゴロゴロ」などテクスチャーから発想したチョコレートのデザインを披露。ユニークな発想は現地でも大きな評判を呼びました。

そんなnendoが2018年の1月展で発表するのは、青森の木工品メーカー「bunaco(ブナコ)」と組んで開発したアンプ内蔵の無指向性スピーカーです。円筒状のアクリルに、薄くテープ状にカットしたブナ材をすり鉢状に巻きつけたスピーカーユニットをかぶせた外観は、余分なものを削ぎ落とした凛とした佇まいが印象的です。そこから、ブナ材の吸音性能を生かしたクリアで臨場感あふれる音が響きわたります。

▲アクリルの筒を含めパーツの存在感を極力排し、スピーカーがあたかも宙に浮いているように見えるデザインは、どんな空間にも馴染みます。nendoとbunacoによるアンプ内蔵の無指向性スピーカーの展示は、ホール7のスタンドD84。

透明な筒の中をよく見ると、テープ状のブナ材の端がほつれたような状態になっているのがわかります。完全に仕上げるのではなく、あえてこのような未完の状態を残すことで、プロダクトを見た人が構造や製作手順を直感的に理解できるよう配慮しているのもデザインの特徴です。

量産に際してはインターネットで個人から小口資金を集めるクラウドファンディングを活用。開発資金の調達や支援者の確保といったものづくりの仕組みにおいても新たな提案を投げかけます。nendoは他にも、中国の雑貨ブランド「ZINS」から花器やティーセットなどの新作を発表予定です。

地場の伝統産業の欧州市場におけるブランディングおよび販路開拓を目指す取り組みからは、鹿児島県が主導する「150 Kagoshima Project」や、漆器の新たな価値づくりを目指して活動する紀州漆器産地5社がTAKT PROJECTと取り組む「KISHU+(キシュウプラス)」に注目します。

前者は薩摩藩がパリ万博に初出展を行ってから150周年を迎えるのを記念した企画の一環として鹿児島県を拠点に活動する15事業者の取り組みを、ランドスケーププロダクツの中原慎一郎さんらの監修のもとで紹介。屋久杉を用いたプレートや大島紬の染め屋として泥染などの加工を行う工房が手がけるラップクロス、ステンドグラスの技法を用いてつくられる西田麗美さんの鏡など、地元のクラフトシーンを牽引する作家の仕事にも光を当てます。

▲「150 Kagoshima Project」からは、茶の湯のしきたりに縛られない薩摩焼きで400年以上の歴史をもつ沈壽官窯とランドスケーププロダクツによる陶器ブランド「Chin Jukan Pottery(チンジュカンポタリー)」のアイテム(写真左)や、鹿児島在住の西田麗美さんが手がける「reimi」ブランドの壁掛けミラーなどが並びます。展示はホール7のスタンドF208/D207。

日本の丁寧なものづくりに対する評価が世界各地で高まるなか、単なるメイド・イン・ジャパンではなく、新たな価値を携えた提案こそが世界に出ていく大きな一歩になります。そんな価値を内包した取り組みとして注目されるのが、「先端工芸」というキーワードで手仕事だけでも工業生産だけでもたどり着けない工芸の新しい表現を目指す「KISHU+(キシュウプラス)」です。開発メンバーがパリを訪れ、市場動向の調査を行うなど、海外での事業展開を強く意識して始まった活動は、いよいよプロジェクト発足時から目標としてきたメゾン・エ・オブジェという舞台に挑みます。

▲KISHU+(キシュウプラス)が発表する作品のひとつ「SHIMA」は、金型から押し出して成形する押出材に、紀州漆器の塗りの技術を施した一輪挿し。

9月には、漆器の表面を加飾する蒔絵(まきえ)の技法を光の拡散機能にあてた照明や、射出成型と塗りや研ぎ出しの技術を組み合わせた一輪挿しなど、10種の試作品を渋谷のヒカリエで発表。制約に縛られない自由な発想から生まれたインテリア雑貨は一定の評価を獲得しました。

それから数カ月。「つくり込みの精度を上げたり、量産体制をしっかり整えて挑みたい」とプロジェクトメンバーが語った活動が、どう深化し、目の肥えた欧州の人たちにどう映るかは興味深いところです。

▲KISHU+(キシュウプラス)の展示イメージ。蒔絵の技法を光の拡散機能にあてた照明「SHIZUKU」が会場を照らします。展示はホール7のスタンドD192/E191。

ライフスタイルに対する新たな提案や、海外ビジネスの拡大などを見据え、メゾン・エ・オブジェというステージに挑む日本のメーカーやクリエイターの取り組みは、岐阜県がイギリスの著名デザイナーであるセバスチャン・コンランと組んで行う「セバスチャン・コンラン・ギフ・コレクション」など他にも少なくありません。そうした展示を見逃さないためにも、メゾン・エ・オブジェのオンラインプラットフォームである「MOM」での事前チェックをお勧めします。

メゾン・エ・オブジェ1月展の会期は、1月19日〜23日まで。

メゾン・エ・オブジェ・パリ 2018年1月展

会期
2018年1月19日(金)〜23日(火)
会場
パリ・ノール・ヴィルパント見本市会場
時間
9:30 〜 19:00(最終日は18:00まで)
問い合わせ
メゾン・エ・オブジェ日本オフィス/株式会社デアイ
Tel
03-3409-9495
E-mail
m-ojapon@deai-co.com