NEWS | プロダクト
2017.12.12 10:00
フィンランドがロシアからの独立を宣言して100年。今や教育や福祉などの面で国際的な評価が高く、デザインの国としても知られる同国は、かつてスウェーデンやロシアの支配下にあった。1917年に独立を宣言したものの、冬戦争(1939−1940年)や第二次世界大戦後もソ連の影響が強く、勢力争いに翻弄された歴史を持つ。そんなフィンランドの人々にとって「独立」の二文字は特別な意味を持ち、12月6日の独立記念日は国を挙げて祝うという。
“かわいい、ほっこり”だけではないフィンランド
日本でも独立100周年を記念し、東京・六本木の21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3で、アルヴァ・アアルトらが1935年に創業したアルテックが主催するポップアップイベント「FIN/100」がクリスマスの12月25日まで開かれている。同社のほか、イッタラ、アラビアといった老舗ブランドをはじめ、テキスタイルメーカーのヨハンナ・グリクセンやカウニステ、ラプアン カンクリなど、現在のフィンランドデザインを代表するものづくりが集まっている。
イベントの主旨について、アルテックの金子尚子(マーケティング&PR)はこう説明する。「日本でも広く親しまれているフィンランドデザイン。かわいい、ほっこり、といった固定的なイメージがありますが、実はそれだけではないんです。フィンランドの人々が生活のなかで実際に使っているのは、もっとすべての人が平等に使えるよう考慮された、実用的で機能的、効率よく生産できるよう削ぎ落とされたシンプルなもの。現地と日本のクリエイティブチームで議論しながら、改めてフィンランドデザインとは何かを整理していきました」。
夜明け前と日没直後にあたりが青い光で覆われる「ブルーモーメント」というテーマの下、キッチン、ダイニング、外出といったシーン別に各ブランドをミックスして展示し、日本の生活にも取り込みやすい提案になっている。また「カンパニー」や「フローラ オブ フィンランド」といった若手クリエイターの作品も紹介し、現在のフィンランドデザインの一端を感じることができる。
連日のイベントやログハウスで生のフィンランドを体感
期間中は「100のできごと」と題し、同国に縁の深いクリエイターたちが集い、連日3〜5プログラムの衣食住にまつわる大小のイベントを実施する(プログラムの詳細はFIN/100のウェブまで)。
本展のクリエイティブディレクションを務める林 貴則(Polar Inc.)は、「フィンランドデザインの色褪せない良さは、日々の小さいことを大切にする繊細なこだわりにある」と話す。著名クリエイターによるトークやワークショップから、新作プロダクトのローンチ、フィンランド流クリスマスパーティ、「世界一まずいお菓子」で知られるサルミアッキの試食、毎朝10時から行われるコーヒーのポットサービスまで、ここで行われる「大きいできごと、小さいできごと」を通じ、フィンランドの暮らしや文化をライブ感とともに伝えていくという。
また、フィンランドの森を思わせるパイン材(松)を使った什器や会場構成は、林とともにクリエイティブディレクションを務めるデザイナーの熊野 亘が担当。同国に7年ほど暮らした経験を持つ熊野は、「いちばん印象的だったのは、仕事が終わると図書館で好きな本を借りて、それをカッリオと呼ばれる石の丘で読んだりピクニックをする、彼らの豊かなライフスタイル。ギャラリー内に、カッリオのような場所をつくりたいと思いました」と階段状の「丘」をしつらえた。ここはレクチャーやトークイベントのためのスペースにもなる。
まさに空間全体がフィンランド一色で染まり、クリスマス本番に向けてヒートアップしていく20日間。慌ただしい師走の日々を駆け抜ける合間に、本場の気分を味わってみてはいかがだろうか。
FIN/100
- 会期
- 2017年12月6日〜12月25日 10:00〜19:00(会期中無休)
- 会場
- 21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3(東京都港区赤坂9−7−6 東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内)
- 詳細
- https://www.fin100.jp/