ヘリコプターの未来を示唆する、ARとAIを駆使したコンセプトモデル
「FCX-001」

最近では無人のドローンや、空飛ぶ自動車の話題に押され気味だが、それらに負けじとヘリコプターの老舗メーカーであるベル・ヘリコプターが意欲的なコンセプトモデル「FCX-001」を発表した。

同社は、これまで実製品の販売に徹し、いわゆるコンセプトモデルをつくることはなかったのだが、異業種の参入によって激化が予想されるこの分野での存在感を高めるために、あえてこのような動きに出たものと考えられる。

その特徴は、大きく分けて4つある。サスティナブルな機体、ハイブリッド駆動システム、副操縦士に代わるAR/AIサポート、そして、飛行環境に応じて変形するローターだ。

パイロットはもちろん乗客の視界も最大限に確保した機体は、ソーラー発電や排気熱の回収などを利用してエネルギーを無駄にしない機構を採用し、エンジンで駆動されるメインローターのほかに、これまでは外部に露出していた水平方向の回転を制御する電動サブローターを後部スリット部分に内蔵する。これにより、サブローターが地上スタッフなどに触れることがなくなり、より安全な運用が可能となる。

パイロットはARゴーグルを装着して操縦し、従来は物理的なメーター上に表示されていた情報は、すべて視界のなかに浮かび上がるように提示される。

また、副操縦士の役割はAIに声で指示するだけでよく、フライ・バイ・ワイヤ(操縦に関わる機構がすべて電気的に接続されたシステム)によるパイロットの操作は、3基の独立したコンピュータシステムによって解析され、最適と思われる指示が駆動系を構成する個々のメカニズムに送られる仕組みだ。そこにはメインローターの変形機構も含まれ、速度域や風向き、相対的な風速などに応じて最も効率的で安定するような制御が行われる。

ベルでは、完全な自律飛行の時代はまだ少し先のことと考えているが、このパイロット+AR/AIによる飛行システムは、そのための重要なステップという位置づけである。

さらに、乗客用のシートはモジュラー化されて取り外しや並べ替えも簡単に行え、さまざまな用途に合わせてカスタマイズが可能となっている。

FCX-001がそのまま量産化されることはなさそうだが、ここに集約されたアイデアやデザイン要素は、今後のベルのロータークラフト(ヘリコプターとティルトローター機の総称)開発に活かされていく見込みだ。End