マテルの「ホットウィール」と言えば、かつて日本でも一大ブームを巻き起こしたミニカーである。
一般的なミニカーが実車のリアルな再現を重視しているのに対し、ホットウィールはショーカーや実在しないドリームカーのような車両を含むラインアップを揃え、派手なカラーリングや車輪の回転摩擦を感じさせない走りの良さが特徴となっている。また、モジュール化された別売りのコースが多数用意され、アクロバティックなレースで競える点も、子どもたちを夢中にさせた。
そのマテルが、「AXIS」でも採り上げたことのあるiPad/iPhoneベースのエデュテイメントシステムのメーカー、オスモと組んで、この昔ながらのオモチャに新しい息吹を吹き込んだ。それが「ホットウィール・マインドレーサーズ」である。
オスモは、iPad/iPhoneのフロントカメラ機能を巧みに利用し、デバイスの前に置かれた実体のあるアイテム(専用の単語カードや数字カード、ドローイング、プログラミング用のコードブロックなど)をリアルタイムに認識。そのデータをアプリ画面と連携させることで、アナログ感覚をデジタル技術で拡張した教育ゲームなどを開発してきた。
同社の技術力と、ホットウィールの持つ世界観を融合するとどうなるか? その答えが、マインドレーサーズなのだ。
プレーヤーは対戦相手とともに実物のミニカーをスタート台に載せ、アプリからの合図で物理的な発進ボタンを押す。すると、ミニカーが助走路を走り始め、デバイスの下のスタンドに開いたトンネル内に吸い込まれる。すると、あたかもミニカーがそのまま画面内のコースに飛び込んだかのようなCGが動き出し、レースが始まるのである。
クルマのコントロールは、トークンと呼ばれる機能別の円形チップをデバイスの前に投げ込んで行い、そこにプリントされたマークをアプリがカメラで読み取って、即座にレース展開に反映させる仕組みだ(ミニカーとトークン自体には電子的な仕掛けが一切なく、製造コストも最小限で済む)。これは、単に画面上のボタンを押すのとは異なる身体的な動作を要求し、たとえるならメンコや花札で勝負に出るときに近い感覚を味わえるようにする仕掛けと言える。
マインドレーサーズは、デジタル時代にもリアルなミニカーをコレクションする楽しみを残しつつ、従来の実物のコースでは不可能な遊び方を提案している点で、歴史あるオモチャブランドを現代に即してアピールするひとつの方向性を示す好例と考えてよいだろう。