廃棄物対策課から、循環社会推進課へ

今年の夏は、 「大気が不安定」というフレーズを何度聞いたでしょうか。各地で甚大な被害があり、多くの家屋が浸水被害にあい、たくさんのモノが廃棄物になってしまいました。そんななか、明らかに人的な行為による事故がありました。岐阜県の丸釜釜戸陶料の不法投棄された廃棄物が流れ出た事件です。違法性を認識していた状態で40年以上も継続的に不法投棄をしていたということ。単純に、廃棄する費用がもったいないから、黙って埋めたということです。

廃棄物の不法投棄といえば、産廃業者の専売特許でした。廃棄物業者の悪いイメージはこれで定着したといっても過言ではありません。適切に管理されていない場所に埋めたことで、環境に多大な影響と住民に甚大な被害を及ぼした事例として代表的な豊島事件があります。

香川県の豊島では、2017年3月、不法投棄が発覚してから40年もかかって、やっと、不法投棄されたモノの全量の搬出が完了。そして、6月に処理が完了しました。しかし、一度破壊された環境は簡単には元に戻りません。こんなに苦労して、40年かけて美しい島を取り戻すためのスタート地点にやっと立てたという意味でもあります。

同じ40年という月日で、片方では元の美しい島を取り戻すために不断の努力をし、片方ではひたすら違法に埋めていたという事実に衝撃を受けました。写真でもわかるように、ごみが撤去されても、元の姿に戻るわけではありません。

さて、これは資源に見えますか? ゴミに見えますか?

私たちの業界、あるいは多くの製造業の方に衝撃を与えた発表が中国からありました。すべてのプラスチック廃棄物の輸入を禁止するというものです。厳密にいえば、廃棄物ではありません。廃棄物はそもそも輸出入が禁止されています。プラスチック資源という名の“廃棄物”、つまり、写真のようなものを輸入禁止にするというものです。理由は明快。中国の環境を汚染するからです。

当たり前です。分別してないプラスチックの塊を中国に送って、現地で分別させるという魂胆が許せません。人件費の問題ではなく、分別後のゴミも中国に送っていることを認識しなければいけません。ある程度の分別でプラスチックを買い取り、中国に安価で輸出し、安い人件費で分別し、ゴミはその辺に捨て、金になるプラスチックを販売することで成り立っている。そんなスキームは終わりです。これからは、もっときっちり分別するか、適正な処理費用を払わなくてはなりません。

私にはどちらも同じ事象に見えます。廃棄物にかかる費用を削減するために、他者に負荷を転嫁することは許容できません。

先月、大分県産業廃棄物協会に呼ばれ、第2回循環産業牽引企業育成講習会で話をさせていただきました。皆さん真剣に聞いていただき、今後の業界のあり方などの情報交換もして、この業界が少しずつ変化しているのを感じました。協会に所属する業者の方たちもご紹介したいのですが、今回ご紹介するのは大分県です。廃棄物を管轄する部署は行政の中にいくつかあるのですが、私たち業者とやり取りをする部署は「廃棄物対策課」です。“対策”とつく行政の部署は、警察の暴力団対策課くらいではないでしょうか。違法な行為を取り締まる意味合いの強いこの名称が、廃棄物を取り巻く環境を象徴しています。国内でも、中国を含めた海外でも、環境負荷に対して違法に逃れようとする会社がいまだに存在するという悲しい現実です。

その一方で、大分県は今年度からこの名称を捨て、「循環社会推進課」に名称を変えたそうです。業者をチェックし対策するという関係から、ともに協力して“循環社会”を創ろう、環境ビジネスを創ろうという関係になるため、その意思をわかりやすく伝えたかったのだと聞きました。悪いことをする会社は一握りです。良い会社のほうがはるかに多いのです。行政側が、一歩踏み込んだことに感動しました。

今はいいかもしれませんが、将来に負の遺産として残すことは絶対に避けなければなりません。私たち業界は、そういう意味では、ひじょうに需要な役割を担っています。自分が快適に生活したモノのその後、会社で製造した端材や在庫品はどこに運ばれているのか、次を知ることが第一歩です。今や、行政、企業、個人の垣根を越えて、循環社会を構築しなくてはならない時代になったのだと思います。End