「フランク・オッペンハイマーと彼のエクスプロラトリウム」K·C·コール 著 (シカゴ大学出版局)
科学教育の概念や考えを揺さぶる
評者 マイク・エーブルソン (ポスタルコ主宰、デザイナー)
サンフランシスコのお気に入りの場所のひとつにエクスプロラトリウムという科学博物館がある。芸術家と科学者こそが社会の公的観察者であると語ったフランク・オッペンハイマーが構想した施設だ。
エクスプロラトリウムは自然の驚異を取り上げ、それらを美しく、親しみやすいディスプレイで紹介している。おそらく彼は、ほとんどの美術館や博物館には表情がなく、無機質であると感じていたのだろう。ここでは、展示品の大半に触れることができ、典型的な科学教育とは大きく異なるアプローチをとっている。その形式は、米国の多くの科学博物館に影響を与えている。
オッペンハイマーは知能を「予測」するとされるIQテストに深い疑念を抱いていた。彼は知能そのものが理解されていないのに、どうしてそれを予測することができるのかと疑問を呈し、それよりも、好奇心や質問することが学習の基礎であると訴えた。
エクスプロラトリウムを何度か訪れた私は、訪問のたびに、心理学的実験や芸術インスタレーション、科学的デモンストレーションのすべてをひとつの魅力あるスペースに収めたのがいったい誰なのか興味を持った。それがフランク・オッペンハイマーであることを知ったのは3度目の訪問後だった。
オッペンハイマーの思想に私を深く導いてくれたのがこの本である。本書は彼の友人である科学ライターによって書かれている。そこには強烈な個性を物語る驚くべき逸話が数多く含まれる。同時に、米国における最先端の物理学者という顔から、人里離れた場所での牧場主、あるいはエクスプロラトリウムの風変わりなディレクターまで、彼のユニークな活動を知ることができる一冊でもある。
ーーデザイン誌「AXIS」187号 「書評 創造へのつながり」より。