シャープデザイン オリジナル広告シリーズ
「デザイナーあるある」(後編)

▲AXIS 183号に掲載の第8回「『これまで』を破壊する」。

2015年7月発売のデザイン誌「AXIS」176号から10回にわたって掲載されてきたシャープのデザイナーの皆さんによるオリジナルシリーズ広告。そのコンセプトと制作過程について、メンバーの方々にお話をうかがいました。その後編です。前編はこちらから。

——つづいて、第183号に掲載の第8回。「これまで」を破壊する、というコピーがついています。

朝井 これは健康・環境システム事業本部のデザインスタジオが担当でしたが、コンペを実施しました。結果、末広さんの案が選ばれ、本人が出演しています。

末広恵梨(健康・環境システム事業本部 デザインスタジオ)
簡単なコピー案とレイアウト案を有志で出し合っていきました。いくつもの案のなかから、2案に絞られたのですが、もうひとりの案がかなり良い感じの写真を撮っていて、コピーもちゃんとしていて、これは負けられないと気合を入れました(笑)。ひとりのデザイナーとして、自分のデザインしたページが誌面に掲載されるのは本当に光栄で嬉しくて、一連の作業もすごく楽しかったです。

▲末広恵梨さん(健康・環境システム事業本部 デザインスタジオ)

——コンセプトについて教えてください。

末広 私はオーブンや炊飯器など調理家電のデザインをしています、ここに貼ってあるスケッチはちょうど掲載号の発売と同時期に発表された小さなオーブンです。白物家電は、日常に溶け込んでいて、どうやったら楽しく使ってもらえるかを、常に考えることができます。だから、家に帰って家事をしている時にも、ふと「今描いているスケッチ、昨日は自信満々に見せたけど、本当にあれで良かったのかな」と思うことがよくあります。これはモノづくりをしている人なら誰にでもあることだと思います。技術部や企画部とひとつずつ積み上げていくうちに、視界がギューっと狭まって、「これでいいんだと」思い込んで走ってしまう。でも、1カ月前のスケッチを見たら「やはりこっちのほうが使いやすいのではないか」と思うことがある。「もっと良い解決策があるんじゃないか」と。この製品をつくっているときもそうでした。それが“あるある”のテーマです。

朝井 最初のビジュアルは末広さん本人の部屋で自撮りしたもので、自然な「あるある」だったのですが、個人情報満載で(笑)さすがにそれはダメだろうと、会社内に末広さんの部屋を再現して撮り直しました。

▲朝井宣美さん(ブランディングデザイン本部)

——表情も決まっています。

末広 すっごく苦労しました(笑)。プロのモデルではないので、硬すぎないように、笑いすぎないようにと。「普段通り」って難しいですね。

——手に持っているスケッチは本物なんですよね。

末広 はい。貼ってあるスケッチ、モニターに映っている画像も実際の検討で使用したものです。デスクもパソコンも普段使っているもので、みなさんに現場の雰囲気が伝わるようにしました。

▲AXIS 184号に掲載の第9回「それ、活かしていこう」。

▲AXIS 185号に掲載の第10回「気持ちの品質」。

——最後は第10回の「気持ちの品質」です。

朝井 第9回までは、コンシューマ向け製品をメインにしたストーリーでしたが、シャープではオフィス機器を中心としたBtoB製品も扱っています。ユーザーの間で話題になることは少ないかもしれませんが、生活の長い時間をオフィスで過ごしている人にとっては、まさに「人に寄り添う」製品であるはず。デザイナーもそこで働く人たちのモチベーション、つまり気持ちの質が上がっていくことを真剣に考えているし、シャープはそういう会社でありたい、ということを表現しています。

▲宮田正志さん(ブランディングデザイン本部 デザイン開発センター)

——登場しているのはみなさんデザイナーの方なんですか。

宮田 そうです。むこうでアイデアミーティングしているのがデザイナーで、手前に写っているのがマネージャー。最初から一緒にやるのではなくて、一歩引いたところから見守っているという構図です。

朝井 これはあべのハルカスにあるスカイラボという弊社のショールームで撮影しました。人手が足りないので、実は私も出演しています(笑)。使っているのは業務用のフルセットのコピー機で製本までできる最高機種です

——撮影が大変そうですね。

朝井 業務時間内なので、みなさんの邪魔にならないように、あらかじめロケハンして、構図やポーズを決めました。
コピーの「気持ちの品質」は、デザインフィロソフィーである「笑顔の品質」とのつながり感をもちながら締めくくれてよかったです(笑)。

——このオリジナル広告シリーズは各企業のデザイン部門が、社内外にいろんな議論を巻き起こしながら実験的に実施いただくというコンセプトで進めてきました。

朝井 AXISに掲載するので、読者は関係者が多い。だから、プレッシャーはありました。学生も読んでいるだろうし、リクルートにも関係してきますから、シャープの良さをいかにアピールするか。

藤本 実際、エアコンの回がすごく気に入って、シャープに入ったという学生もいるんですよ。

中田 誌面のデザインはほとんどやったことがなかったので、とても良い経験でした。アイデアを考えるときも、普段使わない頭を使っている感じで面白かったです。

朝井 社内のツイッターで毎回「AXISに掲載されました」と紹介してもらっていますが、若い人たちから「デザインはこんな活動ができていいですね」と言われることがよくあります。自由にいろいろなアイデアを出し合っている雰囲気がいいとうらやましがられるんです。

宮田 プロジェクトを見る立場としては、みんながすごく楽しそうにやっていて良かったというのが半分と、一連のコピーや流れをもう少し戦略的にできたのではないかというのが半分。自分たちが気持ちよく動かない限り、第三者に気持ちよく伝わらない。ノリノリでやるのは大事だなと思いました。

▲186号に掲載の第2シリーズの第1回。

——186号からの第2シーズンでは、一転して製品に焦点が当たっています。

朝井 新しいシーズンでは、昨年11月に発表したシャープのコーポレート宣言である「Be Original.」を受けて、デザイン部門としての 「Be Original.」 を浸透させたいと考えています。コーポレート宣言とは、シャープの道標といっていいかもしれません。「人に寄り添い、新しい価値を提供し続ける企業」として、さまざまな独自商品・サービスを提供することにより、お客様ひとりひとりが自分らしさを実現できる、「あなたのためのオリジナル」を創り続けること。第2シーズンでは、この部分をデザインの観点で表現していくつもりです。
 製品またはデザインモデルをモチーフに、形状の美しさを際立たせた物語感のある写真で、シャープデザインの「Be Original.」 と、熱い想いを「かたち」にし、「人に寄り添う」ために不可欠なしっかりとした製品づくり(デザイン力の高さ)とともに、私たちのフィロソフィーを具体的な形でお伝えします。
 ご覧いただける皆様に、シャープデザインへのご理解と共感をいただければ、と思います。End

▲今回お話をうかがったシャープのデザイナーの皆さん。