早朝の訪問者。
なぜ上海の彼は朝5:30にやって来るのか。

▲普通の配達は、玄関先に置いといてくれますが、今回は……。写真の建物は約100年前に建てられたフランス租界時代の老房子(ラォファンズ)と呼ばれる建造物のひとつ。今でも普通に人が住んでいます。Photos by Misa Nakata

「ガチャガチャガチャガチャ……」
「ドンドンドンドン……」

ん? どこの部屋がうるさいんだ? 朝の5:30なのに静かにしてほしいなぁ……zzz

「ガチャガチャガチャガチャ……」
「ドンドンドンドン……」

えっ?ウチの部屋やん!? だ、誰なの? え?強盗? そんなわけないよなぁ、多分、多分……。

恐る恐る玄関の扉を開くと、笑顔いっぱいのおじさんがスーツケースを持って来てくれていました。

「受け取りのサインおくれ♪」
「ハ、ハイ……」

先日アメリカの展示会に行ったとき、スーツケースが壊されてしまい航空会社にクレームして修理に出したところ、ある日、「直りましたので明日届けます」との連絡。そして届いたのが、確かに約束通りの日、しかし朝の5:30。朝早すぎでしょうアンタ!

こういうトラブルと言うか、想定外の出来事がほぼ毎日のように起こるのが上海ライフの面白いところです。リスク管理や緻密な段取りやルールや常識や配慮でしっかり守られた日本とは違うので、これを嫌いと思うか、面白いと思うかで、上海での生活や仕事を楽しめるかどうかの大きな差になってきます。

ここからしばらくは、中国の仕事の仕方、ものごとの考え方について、僕なりに感じていることをみなさんにご紹介します。

▲中国は契約社会。指示された業務はちゃんとやってくれますが、時に融通が利かないことも……。

今回は、早朝の訪問者がなぜこんなに朝早くに僕の家に来たのか? 答えは簡単で、それが彼にとっていちばん都合の良いタイミングだったからです。

夜勤の彼は仕事が終わって家に帰るときに、上司から修理済みのスーツケースを渡され、これを津田さんの家に持って行って受け取りのサインを貰うようにと指示されたと思います。

こんな大きなものを家に持ち帰るのも面倒だし、さっさと渡しに行こう、もし遅くなると津田さんは会社に行ってしまうかもしれないから朝が確実、とシンプルに考えただけ。僕が寝ていようが寝ていまいがは思考の外だったのではと思います。

一方、時間指定をしていなかった僕にも原因があるなと、無理やり起こされてから思い直しました。

▲業務であれば日本のように恥ずかしがることもありません。中国の人々は物怖じせず本番に強い!

日本では有り得ないことがしょっちゅう起こる。しかし中国の人々の考え方を理解すれば、それなりに受け止めることができて、先読みもできて、中国流の仕事の仕方や暮らし方がわかってきます。

ここからの数回は、ぜひそれをみなさんにご紹介したいと思います。End