テキスタイルを立体としてとらえる。
誕生したばかりのテキスタイルデザイン会社「pole-pole」の挑戦。

▲pole-poleの3人。左からシミズダニヤスノブ、廣瀬勇士、近藤正嗣

「ポール・トゥ・ポール」と読む。意味は、点と点をつなげること。6月に設立されたばかりのテキスタイルデザインの会社である。ファウンダーは3人。自らのブランドを持ちつつ企業にもデザインを提供するテキスタイルデザイナーのシミズダニヤスノブ、カーテンなど建築系のテキスタイルをデザインする近藤正嗣、洋服のデザインやパターンを手がける廣瀬勇士。布にまつわるキャリアを築いてきた3人が集まったとき、どのような新しい提案が生まれるのだろうか?

テキスタイルを立体としてとらえる

現在、pole-poleとして初の展覧会「pole-pole textile labo 001:faces」が東京・代々木八幡の「CASE GALLERY」で開催されている(7月9日まで)。展示されているのは新たに開発したテキスタイル「michi」と「kiri」。それぞれネイビーとグレーの色違いの布地を天井から吊るし、シャープな空間をつくり上げている。

▲CASE GALLERYでの展示風景。

「michi」は兵庫県西脇の織物工場「大城戸織布」が制作。以前から知り合いで、pole-poleの目指すものと、大城戸織布の新しい織物をつくりたいという思いが合致して、デザインに対しての技術的なアイデア、提案をお互いにやりとりしながら布地をつくりあげた。複雑な凹凸感が印象的な作品だ。

テキスタイルを立体としてとらえる。まさにそれが今回のコンセプトである。「僕とシミズダニはプリントに特化した仕事をしてきたので、pole-poleでは違うアプローチをしたい。織りによって、裏表のない凸凹した質感のテキスタイルを考えました」と近藤は説明する。


▲「michi」

もうひとつの「kiri」は片面がコットン、片面がウールという質感の違いを楽しめる作品。ウールだけを薬剤で溶かすというプリント技法により、柄の一部が霧のように透けて見える。「天然素材にはあまり用いない技術で、協力を依頼したプリント工場「相和プリント」でも30年ぶりに使ったそうです」(近藤)。どちらの作品も技術的に難しく、かなり試行錯誤したようだ。

▲「kiri」

あえてマニアックを突き進む

会場では、これらのテキスタイルを使ってパタンナーの廣瀬が制作したシャツやパンツ、クッションカバーなどの最終製品を展示しているが、用途が決まっているわけではない。「“おいしい素材”として提供して、ものをつくる人には自由に料理してもらいたい」(シミズダニ)。

▲「michi」を使ったシャツとパンツ。

▲「kiri」を使ったシャツ。片面ずつ表にして2種類つくり、素材の違いを楽しめる趣向だ。

商売や製品ありきではなく、テキスタイルという素材ありきだからこそ、あえてマニアックとも言えるような技法にこだわる。会社を設立し、自らリスクと責任をとる環境を整えたのも、思うままに自由なものづくりを貫くため。それを面白がってくれ、どんどん提案してくれるような工場とのコラボレーションを広げていきたいという。「持ち出しも多いから大変だけど、楽しい。最終的にテキスタイルの価値が上がればいいですよね」と近藤は前を見据える。

次のプロジェクトについて尋ねると「プリントをやります」という明確な答えが返ってきた。シミズダニと近藤の得意分野であるプリントで、秋のアートイベント「六甲ミーツ・アート 芸術散歩2017」のためのインスタレーションを制作するそうだ。「pole-poleの使命はテキスタイルをいろいろな角度から考えていくこと。展示だったり、遊びだったり、アートだったりと見せ方はさまざまです」(近藤)。

某大手テキスタイルメーカーのクリエイティブディレクターは、「ユニットを組んで作品をつくる例はよくあるが、会社化してビジネスとしても提案していこうという取り組みは見たことがない」と関心を寄せる。「テキスタイルの面白さと可能性を伝えたい」と意気込むデザイナーたちの門出に注目したい。End

pole-pole textile labo 001 ” faces ”

会期
2017年6月28日(水) – 7月9日(日)
時間
平日:14:00-20:00
土・日:11:00-20:00
※月曜定休
料金
入場無料
場所
CASE GALLERY 東京都渋谷区元代々木町55-6
詳細はイベント情報ページをご覧ください。
その他
株式会社pole-pole facebookページ