あなたはB級品を受け入れられますか。
NO PROBLEM展が問いかける日用品の精度

今日からスタートした「NO PROBLEM展 To “B”, or not to “B” 日用品をとおして生き方を考える。」は、インドの耐熱グラス「VISION GLASS」の輸入元が主体となった、日用品のB品を考える展覧会。

▲VISION GLASSはインドの理化学ガラスメーカー、ボロシル社のブランド。直火対応の耐熱性とミニマルな形に特徴がある。会場ではボロシル工場での製造工程をイラストで説明。これがとてもわかりやすい。

ことの発端は、VISION GLASSをインドから輸入した当初、その半分が小さなキズなどの理由で販売できず、その後、メーカーが検品の仕方を変えたりしても、やはり2、3割がB品になってしまったことにある。そのとき、VISION GLASS JPの小沢朋子さんは疑問を抱いたという。「B品は製造過程でどうしても生まれてしまうが、その大半はじゅうぶんに使うことができる。日本ではねられるB品はインドをはじめとする他の国々ではB品にならない。受け止める人の価値観の違いに起因するのではないか」。

ならば、どのように製品がつくられているかをユーザーに伝え、B品が出る理由を理解してもらえたら。それが展覧会を企画したきっかけだ。

会場に並んだVISION GLASSのB品を見ると、ほんの小さなキズやカスレ、歪みといったものばかり。該当部分に小さな矢印をつけて展示しているが、どれも目を凝らさないとわからないほどだ。

▲VISION GLASSのB品例。矢印のところに本当にわずかなキズがある。そのキズの分類が例えば「水滴」「流れ星」「サムライ」「ゆがみ姉妹」「ロゴ位置不備」といった具合にユニーク。小沢さんによると日本で検品するうちに自然と付いた呼び名とのこと。

一般に日本の検品基準は厳しいと言われるが、実際にどこまでがOKで、どうなるとはねられてしまうのかを知る機会は少ない。NO PROBLEM展では、VISION GLASSだけでなく、茶筒で知られる京都の開化堂、広島の家具メーカーであるマルニ木工、荒物問屋の松野屋といった10社が出展。B品の線引きは各社ごとに違うことが浮かび上がる。それは扱う素材や製品の用途、考え方に起因しているようだ。ヤマサキデザインワークスは「天然素材を使っていると個体差があり、グレーゾーンがかなりある」と、SIWA(紙和)は「高い製品クオリティは、私たちの誇りにもつながる」とタブロイド紙のインタビューに答えている。

▲波佐見焼のマルヒロによるマグカップ。ほんの些細な凹みや釉薬のカスレでB品となる。

VISION GLASSでは、B品をNO PROBLEM(問題なし)のNP品として定期的に“定価”で販売している。小沢さんは「定価で販売することがひじょうに大切」と言う。

自分に置き換えたとき、どのくらいのB品ならば許容できるだろうかと考えずにはいられない。気づかずに購入するのは構わないが、NP品と記されていたら、通常品とNP品のどちらを選びたいだろうか。一方、各社の検品基準を垣間見ると、そこまで厳しくする必要があるのだろうかという疑問も生じる。製品のクオリティは、ユーザーのためにあるのか、それともつくり手のためにあるのか。身近な製品から暮らし方や社会とのつながり方を考えるような展覧会だ。End

▲タブロイド紙「NO PROBLEM」(各300円)。出展企業のインタビューやインドの建築事務所スタジオ・ムンバイのビジョイ・ジェイン代表のインタビューなどを掲載。普段あまり語られることのない、各社の製品精度に対する考え方がわかる貴重なインタビューだ。
NO PROBLEM展

会期
2017年6月20日(火)〜7月17日(月・祝) 11:00〜20:00 会期中無休、入場無料
会場
GOOD DESIGN Marunouchi(東京都千代田区丸の内3-4-1 新国際ビル1F)
主催
NO PROBLEM プロジェクトチーム
共催
公益財団法人日本デザイン振興会(JDP)
詳細
http://visionglass.jp/np2017/
追記
神戸展は7月29日(土)〜8月13日(日)までデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)にて