▲「AMP(アンビエント・メディア・プレーヤー)」
SXSWでの「ゲームチェンジャー・カタパルト」の紹介の締めくくりとして、さらに5つのプロジェクトを取り上げる。
機能性インテリアと銘打った「AMP(アンビエント・メディア・プレーヤー)」は、環境映像や環境音の作品を絵画などと同じようにリビングなどの住空間で鑑賞できるコンテンツとしてとらえ、そのための表示・再生デバイスと作品購読サービスをセットにしてビジネス展開を図るプロジェクトだ。
フレームとしてのシンプルさを極めていくと、デザインとしての表現の余地は狭まるが、全体のフォルムをスクリーンを想起させる長方形ではなく正方形とし、上下の余白の部分に4つのスピーカーシステムを内蔵する。
SXSWの会場では、実際のリビングルームを模した部屋がつくられ、棚置きや床置きなどのインテリアに溶け込む展示方法が採られていた。
▲「ゴービー」
ソーシャル系のプロジェクトとしては、「ゴービー」と呼ばれるウェアラブルデバイスと「ソーシャル・アピアランス・コーチング・デバイス」というふたつの取り組みが披露された。
「ゴービー」は、フィットネス系のウェアラブルデバイスと同じように、ユーザーの健康を維持することに目的がある。しかし、そこに身体だけでなく心の健康も含まれる点や、身体情報を記録して運動を促すという受け身のツールではなく、ゲーム感覚で積極的に動きを促す点で、従来の製品と大きく異なっている。
具体的には、例えば同僚とハイタッチをしたり、ある動作のリレーをするなどの課題が与えられ、それをこなすことでポイントが貯まっていく仕組みだ。これもパーソンズ美術大学の学生との共同プロジェクトだが、企業内からは出てこないアイデアとして高く評価されていた。
▲「ソーシャル・アピアランス・コーチング・デバイス」
また、現時点では機能をそのまま文字にしたような固い名称の「ソーシャル・アピアランス・コーチング・デバイス」は、企業内などでのコミュニケーションを円滑にしたり、説得力のあるプレゼンテーションを行うためのデジタル・アドバイザーと言える。
その際に重要なのは、話す内容もさることながら、姿勢や身振り、声のトーンなども含めたトータルなアピアランスであるという考えに基づいて、効果的な話し方やジェスチャーをコーチングしてくれるのだ。
サウンドセンサー、モーションセンサー、ストレスセンサーを内蔵したプロトタイプデバイスは、首の後ろや襟、下着に装着するようになっており、複数を組み合わせて、より正確なデータが取得される仕組みである。
▲「サケクーラー」
ワインクーラーを意識した「サケクーラー」は、日本酒を世界の人々に、より気楽に、かつ美味しく味わってもらうために開発されたデバイスだ。円筒形の筐体に酒の瓶を差し込むと、内蔵カメラによってラベル情報が読み取られ、背面のディスプレイに、メーカー情報や酒ごとに異なる飲み頃の温度、味わいにマッチする肴や料理などのアドバイスが表示される。
もちろん、内部の酒は冷却機能によって氷なしで最適の温度に管理されるため、個人利用だけでなく、パーティーやレストランなど、活躍の場は広そうだ。
▲「ギター・ヒーロー」
なお、展示会場となったレストランのウィンドウでは、夜になると「ギター・ヒーロー」と呼ばれるインタラクティブな映像作品も上映された。英語で「GuitAR Hero」と綴られたこれは、動きのセンサーであるキネクトと拡張現実技術を組み合わせて、ウィンドウの前に立つ人をエアギターのプレーヤーに変身させるというもの。場所柄もあって、プロジェクションされた自分の姿に気づいた通行人たちがノリノリで楽しむ姿は、なかなかに微笑ましかった。
今回のイベントで公開された新規事業提案が順調に発展していけるかは、今後の実用化への煮詰めにかかっているが、ひとつでも多くのアイデアが日本発の新家電分野として根づいていければと感じた。