▲ ひじょうに割り切ったデザインのMobile。Photos by Misa Nakata
上海の道でよく目につく、オレンジ色のレンタサイクル。
昨年9月くらいにサービスが始まったようですが、今は街じゅうに溢れかえっています。Every day is Special day、話題のひとつ目は、このレンタサイクル「Mobike(モバイク)」についてお話ししたいと思います。中国ならではの感覚がこのビジネスモデルにたくさん詰まっているからです。
それは何かと言いますと……。まずこのレンタサイクル、どこでも乗り捨てOK!なのです。日本や欧州では有り得ないですよね? 自転車置き場に駐輪しないとさっさと撤去されますからね。でも中国にそういう規則はありません。だから好きなところまで乗って行って、好きなところで路駐する、というか放置する。これらの自転車にはGPSがついていて、スマホのアプリを使って地図上の自転車を検索して使うんです。
▲ スマホで簡単予約。これはOfOという会社の自転車。
ちなみに30分乗って1元(約16円)と格安。しかし最初に入会金として299元(約5,000円)が必要なため、会社はそれを元手に投資し、大量の自転車を導入することができます。
また、自転車のデザインが秀逸です。欧州のデザイン事務所に依頼したという耐久性に優れたデザインとなっています。
錆びないアルミ製の堅牢なフレーム。チェーン式でなく密閉式のシャフトドライブ。前後タイヤは片持ち固定で交換しやすい構造、タイヤはパンクしにくい仕様だそうです。また壊れやすい電装系の装備は一切なし、夜は無灯火で走ることになりますが、それは自己責任という割り切り。倒れると歪んでしまうカゴは太いパイプ製、もしくはカゴなしバージョンもあります。サービスを明快にした結果、プロダクトデザイン自体も進化を遂げているのが面白いところです。
▲ 本当に乗り捨てるのでこんな乱雑に状態にも。
以前の上海では、きれいでカッコいい自転車は即盗まれる、ということが多々あったらしく、そのせいで汚い自転車ばかりが路上に停まっていて美観を損ねていました。この“乗り捨て御免レンタサイクル”のおかげで、汚い自転車が大幅に減り、街も美しくなった……めでたしめでたし、と言いたいところですが、ここからが中国のスピードのすごいところ。
オレンジを追いかける、第2、第3の競合(黄色や青色)がわずか数カ月で参入。レンタル電動自転車(緑色)も加わっています。基本料金が半額に、もしくはキャンペーン中は無料。さらに地図で紅包探し(乗って当たれば紅包=お小遣いがもらえるゲーム的な要素)まで加わり、街はあっという間にレンタサイクルだらけになってしまいました。
その結果、後から自転車置き場が整備されはじめたという、その順番がいかにも中国らしいということで、今回は終わりとします。