シリーズ第2回 
「LIVING & DESIGN 2016」を語る。
伴戸商店

住まいと暮らしの新たな創造を発信する住空間・インテリア関連産業見本市「LIVING & DESIGN」が、10月12日(水)から3日間にわたり大阪南港ATCホールで開催されます。8回目を迎える今年は「テクノロジーが創り出す次世代のリアルデザイン」をテーマに、人々のライフスタイルに応じた提案やそれらを彩る商材を広く紹介。リノベーション需要の高まりを背景に、既存の住空間を見直すインテリアの提案も多数揃う予定です。

LIVING & DESIGN 2016の見所を出展者にフォーカスしていち早く紹介する連載の第2回は、京都・西陣で金襴緞子(きんらんどんす)の製造卸で知られる伴戸商店です。主力である人形衣装や小物袋の製造で蓄積した金・銀糸を織り込んだ色鮮やかな模様とその技術をインテリアの内装材として提案するなど、金襴の新たな活路を見出す取り組みを積極的に展開しています。今年初めてLIVING & DESIGNに出展するその狙いなどについて、伴戸恒夫社長に話を聞きました。

▲京都市上京区堀川通今出川下ルに位置する伴戸商店本社1階では、金襴を用いた手提げ袋などの土産類が多数並んでいます。

スポーツシューズに金襴という新発想

——「金襴」と聞いて多くの人が想像するのは人形や小物袋向け用途です。しかし、伴戸商店では新分野の開拓にいち早く乗り出し、タブレット端末やベビーカーのカバー、スポーツ選手の衣装などにも販路を広げています。

 今でも売り上げの半分は人形関連です。ただ、人形の需要というのは住宅事情によって大きく左右されます。住まいのコンパクト化によって人形を飾るスペースがどんどん減るなかで、新たな需要開拓を目指してインテリアやギフトショーなどの見本市に出展するようになったのは1993年からです。

——2004年にアシックスが発売した、アッパーに金襴を用いたシューズが大きな注目を集めました。

 インテリアの展示会でたまたまアシックスの人の目に留まったことがきっかけです。日本をイメージしたデザインの素材として耐久性を高めた金襴を開発し、提供させていただきました。海外でもかなり評判になりましたし、反響は大きかった。

▲伴戸商店は1960年設立。三代目の恒夫社長の代より人形以外の用途開拓を積極的に推進。新柄の発表にも力を入れています。干支の酉にちなんだ柄やハロウィーンを意識した図案など、「お客さまのニーズから生まれたものも少なくありません」と話します。

広がるインテリア需要に向けた取り組み

▲造形集団が手がけた東京・目黒のキッチンバー「新目黒茶屋」では、伴戸商店の金襴が店内の壁と天井一面に使われ、雅な雰囲気のなかで食事が楽しめます。

——近年はインテリア分野にも需要が広がっているようですね。

 飲食店を中心とした商業施設で、壁面や間仕切り材の一部として金襴を用いるデザイナーの方が増えています。シックな空間にきらびやかな織物をピンポイントで使うことで演出効果を高めたり、住宅などでも癒しのアクセントとして和モダンの金襴を取り入れる動きが増えています。テーブルランナーやランチョンマットなどがその例です。こうした和モダンテキスタイルとしての金襴の魅力をインテリアデザイナーや空間設計に携わる人たちにもっと感じてほしいと思い、LIVING & DESIGNへの出展を決めました。

——常時5,000種をストックする柄の豊富さも大きな魅力です。

 需要やトレンドなどを見極めながら、マイナーチェンジも含めて毎年200種類を投入しています。おそらくこれだけの在庫を持っているところは他にないでしょう。「こんな柄をつくってほしい」と要望をいただくことも多いのですが、そのときは「まずうちに来て、すべての在庫を見てください。希望のものが必ず見つかるはずです」と言っています(笑)。LIVING & DESIGNの会場で展示できる柄数には限りがありますが、会場で興味を持っていただいた人が京都の西陣まで足を運んでくれるような流れがつくれたら、出展の甲斐があります。

▲常時5,000柄をストックする棚から反物を取り出す伴戸恒夫社長。「同じ柄でも異なる色味を用意し、ニーズに応えるようにしている」と話します。

——機能面でも特長があると聞いています。

 素材がポリエステル中心なので、価格がリーズナブルです。70cm(幅)×10m(丈)の反物で値段は1万5,000円ほど。また、耐久性やメンテナンス性に優れているのでコスト競争力も高い。表面にアクリルコートを施し、こうした点をさらに強化したものもあります。

▲LIVING & DESIGNの会場では、きらびやかな文様を売りに、テーブルランナーやゴルフバッグなどにも活路を広げる金襴の魅力に触れることができます。

世界に金襴の魅力を伝えたい

——今後の需要については?

 2020年の東京オリンピック開催を見据え、店舗ディスプレやインテリアに和素材を取り入れる動きがますます活発になっていくでしょう。その素材の1つとして金襴は今後いっそう注目を集めるだろうと確信しています。ただ、個性の強い柄が多いので、使い方には注意が必要です。過剰に用いるより、アクセント的な効果を狙って部分的に取り入れることをお勧めします。トゥーマッチはダメ。
 これは私が以前からよく言っていることですが、住宅環境が西洋化すればするほど“癒しの和”をワンポイントで求める傾向が高まると思っています。インテリアの一部としての金襴の楽しみ方が商業空間だけでなく、生活の中に入り込んでいく余地は大きいはずです。

——LIVING & DESIGNでは、展示を機に出展者同士が新たな交流を持ったり、協業につながる例が少なくありません。

 交流という部分で期待しているのは家具やテーブルウェアの業界です。生活まわりの品に入っていければ、海外の人たちにも気軽に金襴を楽しんでもらえるでしょうから。その点からも、世界に向けて金襴の魅力を発信していく必要があります。LIVING & DESIGNのような国際性に富んだ見本市には、そうした効果も期待しています。
 東京の見本市に比べると規模の面ではやや劣りますが、その分、個々のブースの設えや会場全体の統一感がしっかりなされているのがLIVING & DESIGNの魅力です。関西の経済を盛り上げるためにも、この見本市には頑張ってもらわないと困りますね(笑)。

——価格や機能の面からも高い汎用性が期待できる金襴の需要の広がりを期待しています。(インタビュー・文/編集部・上條昌宏)

▲取材時に伴戸恒夫社長が書いたメモ。コスト競争力や汎用性の高さから、さまざまな用途に展開できるのが金襴の魅力であり、「何に化けるかは使い手の発想次第」と話します。お寺の住職が身に纏う袈裟や法衣向けのほか、掛け軸の土台となる表装裂地などの需要も多いとのこと。

LIVING & DESIGN 2016 住まいと暮らしのリノベーション TOTAL INTERIOR
会期:2016年10月12日(水)~14日(金)
時間:10:00~18:00 (最終日は17:00まで)
会場大阪南港ATCホール(大阪市住之江区南港北2-1-10)
入場料:1,000円(招待状持参者、事前登録者は無料)
主催:LIVING & DESIGN 2016実行委員会
総合プロデューサー:喜多俊之
会場構成ディレクター:間宮吉彦
コーディネーター:川上玲子
問い合わせ先:LIVING & DESIGN 実行委員会 事務局
info@living-and-design.com
伴戸商店のブースは、会場エスカレーターを下りて真直ぐ行った一番奥(突き当たり)の60番コーナーになります。

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