vol.75 空のパーソナルモビリティ
「イーハン184」

今、最も普及しているドローンの形式ともいえるマルチコプター(3つ以上のローターを搭載する回転翼機)は、その安定性の高さと電子制御の行いやすさが特徴である。当然ながら、このマルチコプターの構造は、スケールアップした有人機にも応用でき、すでに世界ではいくつかの実験機やプロトタイプが開発されている。

そのなかで、最も実用化が近いと主張しているのが、中国製の近距離移動用ひとり乗りAAV(オートノモス・アエリアル・ビークル=自律航空機)の「イーハン184」だ。

すでにホビーや空撮用の小型ドローンを製品化しているイーハンだが、もともとの技術開発の動機は、親友とヘリコプターの教官を相次いでフライト中の事故で亡くした同社CEOの心に、安全な航空機をつくりたいという思いが生まれたことにあったという。

イーハン184は、8つのモーターを持つマルチローター機構の採用によって、そのなかの1つが故障しても安全に飛行を続けて最寄りの空港などに着陸できる能力を持ち、専用アプリ上で経由地や目的地をタッチで選択するだけで、最適のコースを自律飛行する能力を備える予定だ。その意味で、1名だけの乗員はパイロットではなく、あくまでパッセンジャーということになる。

ちなみに、イーハン184の予想価格は20万~30万ドル。すでに有人状態を含む100時間以上の試験飛行が行われ、2016年内のリリースを目指しているとされるが、もしも開発が予定通り進んだとしても、最大の難関は、このような航空機の自律飛行を認めるか否かという航空法の対応の問題となりそうだ。