vol.73
「なぜか電球デザイン in 台南・高雄」

先日、所用で台南を訪れた際、ちょっと気ニナルアイテムがいくつかあったので、今回は、それらを紹介してみたい。

台北は何度か訪れているが、台南は初めてだったので、土地勘を得ようと歩いているときに目に入ったのが、「魔幻果汁 青蛙」である。

「魔幻果汁」は、たぶん「魔法のように美味しいジュース」の意味でつけたキャッチフレーズと思われるが、飲み物に「青蛙(ちんわー)」とは、少し場違いな感じもする。実は、これはタピオカがカエルの卵に似ているところから、そう呼ばれているもので、要はジュースとタピオカミルクティーの両方を提供する店なのだった。

もちろん、変わった店名だけならば通り過ぎたところだが、この店は持ち帰り用のボトルがさらにユニークで、電球の形をしている。そこで、思わず買い求めてみたところ、ボトル本体はPET樹脂の成型品で、口金部分も専用につくられていた。

写真は帰国してから適当なソフトドリンクを入れて撮影したものだが、店頭では、2、3種類の果汁を層状に重ね、フレーバーやカラーに応じて、その名も「夜空」「生命」「誘惑」「秘密」「智慧」などの名前をつけて販売されている(価格は20~50元。1元=約3.3円)。電球型のボトルはこの店のオリジナルであり、デザインやプレゼンテーションの工夫で他店との差別化を図っているのであった(ドリンク自体もフレッシュで美味しかったが)。

台湾では、日本統治時代を振り返ることで台湾人の原点を見つめ直す「懐日ブーム」が起こり、日本人企業家たちが建てた古い建物をリノベーションしてデザイン雑貨店やカフェに仕立てたり、台湾デザイナーの製品だけを集めて販売する店が主要都市にできるなど、デザインへの関心が年々高まっている。

日本でも一時ブームとなった、漫画イラストのような Jump From Paper 2Dバッグ も台湾デザイナーの作品だが、こうしたデザイン情報の紹介を行うブログサイトからスタートして、今では直営ショップで紹介アイテムを販売したり、オリジナル製品の開発やデザイン受注もするようになった 25TOGO DESIGN も気ニナル存在だ。

その4番目のショップが台南の隣の高雄にあると知って足を伸ばしたのだが、それは閉鎖された倉庫街を再開発した駁二芸術特区の一角にあった(ちなみに、アートやデザインをテーマにした特区開発は、台南や台北でもここ数年のトレンドとなっている)。

そして、高雄店では、他の25TOGOショップでは提供されていないアイスクリームを販売する25TOGO Bright!が併設されているというので入ってみたところ、半電球型のカップが選べたので、迷わずこちらを買い求めた(シングル40元、ダブル110元)。

半電球型なのは、アイスクリームを入れて電球型を完成させるためで、これを食べてひらめきを感じて欲しいという意図からデザインされている。

このカップも、ロゴ入りのオリジナルだが、下がすぼまっているため、そのままではテーブルなどに置くことができない。ショップでは、アルミ削り出しのシンプルなスタンドにセットされて供されるが、その部分は非売品のため、筆者は帰国してから自分でスタンドをデザインし、3Dプリンタで出力して使っている。

さて、最後は電球型ではないが、駁二芸術特区内の誠品生活で販売されていた iThinking のBear Papa(680元)にも触れておきたい。

iThinkingは30年近い歴史を持つ台湾の工具メーカーKing Tony Toolsのデザイン部門が独立するかたちで創設されたツールブランドで、”Design with home in mind”、つまり「家で使われることを意識したデザイン」を目指した製品づくりをしている。

クマの形をしたラチェット付きドライバーセットのBear Papaも、リビングに置かれたままでも気にならないデザインでまとめられており、自分のような工作好きにはありがたい。ラベルや透明ケースのロゴに至るまでコストをかけてつくり込まれている点も好感が持てる。

今回は駆け足での訪問だったが、台湾のデザインスポットは、改めてじっくり巡ってみたいものだ。