第3回 家族のカンバセーションピースになるキッズファニチャー、サイベックスとカルテル

4月に開かれたミラノデザインウィークでは、新たに子ども向け家具を発表したメーカーの存在が気になった。

▲ マルセル・ワンダースがデザインしたキッズファーニチャー「High chair」。ビーチ材を用い、シート部分はプラスチックシェルにクッションを合わせている。


自動車用のチャイルドシートやバギーといった製品で知られるドイツのサイベックス社が、キッズ向けの家具市場に参入。デザインウィークで初のコレクションを発表した。

ネーミングは“ペアレンツ・コレクション”。キッズ向けだが、パパやママ好みのインテリアの1つという意図だ。3歳児までが利用可能な食卓用のハイチェア、ロッキングチェア、バウンサー、お片付け用の道具入れからなり、デザインはマルセル・ワンダースが担当。

ワンダースは「乳幼児が使う家具は安全第一。もちろん使いやすさも大切。加えて、子どもが使いたくなるファンタジー性、親が部屋の中に置いておきたいデザイン性を追求した」と述べている。物心がつくころからデザインに触れることで、家具を大切にする心を養うことは大切だろう。

▲ ゆりかご「Rocker」。レザーに刺繍を施したシートは、乳幼児の自然な体の動きで揺れるように設計。ハーネス部分は3点で体を抑え、安全性を確保。ウッド製の脚で滑りを防止する。日よけ用のサンバイザー付き。生後6カ月から3歳までが利用可能。


カルテルもキッズラインをスタートさせた。フィリップ・スタルク、ピエロ・リッソーニ、フェルッチオ・ラヴィアーニの大御所に加えて、nendoがデザインを手がけた。

nendoの佐藤オオキ氏は「昨今、金型に巨額の投資が必要な樹脂製プロダクトを発表するメーカーが減り、ウッドや布張りの家具が増える傾向にあるなかで、積極的に樹脂製のプロダクトを開発するカルテルの姿勢には頭が下がります」と言う。カルテルと言えば、プラスチック家具メーカーとして70年近い歴史がある。培ってきた技術を常に変容させながら、新たなプロダクトを生み出してきたことが同社の強みだろう。

▲ nendoがデザインしたのは、透明な木馬ならぬロッキングホースの「H-horse」。椅子であり玩具にもなる。透明度の高さはアクリルならでは。強度ではポリカーボネイトより劣るアクリルだが、一体成型によって剛性を確保。カルテルらしさを考慮したデザインと言える。

▲ フィリップ・スタルクがデザインしたのはポリカーボネイト製の透明なブランコ「Airway」。宙に浮くブランコは子どもの夢。おおよその対象年齢は、3歳から8歳児。

▲ ピエロ・リッソーニによるキッズカー「Testacalda」は、大人が嫉妬しそうな完成度。アクリル製。


2つのコレクションは、子どもが大きくなってもインテリアアクセサリーとして置いておきたくなるアイテムになっていた。家族が集う空間に置かれ、家具を通して親と子がコミュニケーションする。そんなカンバセーションピースとしてのキッズファニチャーが、これから増えていくのかもしれない。(文/長谷川香苗)