昨年、デンマークの照明器具メーカー、ルイスポールセンからデスクランプ「NJP Table」が発売されました。ルイスポールセンは直接光と間接光のバランスを特徴とするPHランプシリーズやシンプルな造形と光の設計にこだわりのあるAJ ランプシリーズなど世界的に人気の高い製品を生み出してきました。「NJP Table」は、ルイスポールセンが初めて開発に挑んだアーキテクトランプ。佐藤オオキさんが代表を務めるnendoによるデザインです。
ルイスポールセンの照明を定義する3つの大切な価値とは、機能、快適性、そして雰囲気。最終の製品を見た佐藤さんは、「ニュートラルな仕上がりで、かつベーシックすぎない形になった」と言います。開発には2年以上を要したとのこと。そのプロセスにおいては、nendoとルイスポールセンの開発チームとの間で、細やかで妥協のないやりとりがあったようです。
「NJP Table」の大きな特徴は、照明灯具部分とアーム部分にあります。緻密に計算されたグレア・フリー(眩しさがないこと)と、拡散する配光。従来のデスクランプらしさを失なうことなく、指向性のあるLED光を“広がる光”へと変換しています。光源ユニットが小さいことで、内面の反射を広くとることができ、マットホワイトの仕上げによって柔らかい光が漏れる。広く周辺に心地よい明るさを届けます。LEDユニットの極小化によって生まれる薄さや軽さを形にするとき、いかにもLEDぽい照明器具になりがちですが、灯具は決して小ぶりではなく、むしろ存在感のあるスケールです。
機能的な部分は隠さないというルイスポールセンの伝統的な考えが、このアーム部分に見られます。デスクランプの特徴といえばフレキシブルに稼働させるための部材であるバネ。それを従来のデスクランプのように機械的に表現するのではなく、2箇所のジョイント部のバネの露出は控えめです。そのため、よりシンプルな印象の形状になっています。
nendoがこれまでデザインプロジェクトで関わってきた企業やブランドに比べても、ルイスポールセンとは、かなり頻繁な提案と確認の繰り返しがあったとのこと。「NJP Table」はホワイトとブラックの2色展開で、設置タイプはベース式、クランプ式、ピン差込式の3通り。一気に色やサイズバリエーションを増やしていくのではなく、しっかりマーケットの反応を見ながら展開を考えていくというルイスポールセン。その地に足がついて姿勢の中に、今後への期待が高まります。(文/谷田宏江、ライティングエディター)
取材協力 : nendo /ルイスポールセン ジャパン 株式会社