慶應義塾三田キャンパス
「建築プロムナード 建築特別公開日」27日、28日に開催

11月27日(金)、28日(土)の両日、慶應義塾大学三田キャンパス内にある通常非公開の建築が特別公開される。

▲ 慶應義塾大学 第一校舎、設計:曾禰中條建築事務所、竣工1937(昭和12)年
  構造:鉄骨鉄筋コンクリート造3階地下1階建

公開されるのは演説館、旧ノグチ・ルーム、塾監局 (外観のみ)、図書館 (外観のみ)、旧図書館(外観とエントランスホール、階段の見学可)、第一校舎(27日は外観のみ、28 日はルート限定で内部公開)、大学院棟 (外観のみ)。

日本初の演説をするための専用の場「演説館」は、自分の考えに賛同してもらうため、大衆の前で自分の意見を伝えることの大切さを感じていた福澤諭吉が設けたもの。1875年、演説というコミュニケーション方法が確立していた米国を手本に設計されたというが、なまこ壁に瓦屋根という和風建築の要素と、玄関ポーチや上下に開く窓といった西洋建築の要素が混在した折衷様式がユニーク。これまでに存在しなかった用途の建築をどう表現したらいいのか、手探りで進めていったのだろうか。


▲ 演説館、竣工:1875(明治8)年、構造:木造2階建寄棟造桟瓦葺屋根


慶應義塾大学の管理業務が集まる「塾監局」は、ヨーロッパで19世紀半ばに再流行したネオ・ゴシック様式を鉄筋コンクリートで表現した建物。1926年という欧米ではアールデコが席巻していた頃に建てられたことを考えると流行遅れの感もあるが、中世の要塞のような姿は大学を監視するという機能にふさわしいともいえる。

赤レンガ造りの旧図書館は戦災を逃れ、今も1912年竣工当時の建築を伝える貴重な存在。重厚感あふれるネオ・ゴシック様式は知の宝庫としてふさわしいのだろう。教会に足を踏み込むときの襟を正したくなるような神聖さをたたえている。当時の学生たちも本から学ぶことのありがたさを今と同じように感じていたかもしれない。


▲図書館旧館、設計:曾禰中條建築事務所、竣工:1912(明治45)年、構造:煉瓦造2階地下1階館


さらに建築家、谷口吉郎とイサム・ノグチが共働し、2005年に形を変えて移設された旧ノグチ・ルームの公開も貴重な機会だろう。

谷口は40代の頃、第二次世界大戦の戦災によって木造建築のほとんどが消失した三田キャンパスの復興計画を任される。福澤諭吉が「演説館」と対になるかたちで新たな対話の場「萬来舎」を構想したことに共感した谷口は、新しい時代に求められるコミュニケーションスペースとして第二研究室内に新たな「萬来舎」の建設を計画。建築と芸術のハーモニーを実現するためにイサム・ノグチにコラボレーションを依頼した。ここに建築家と芸術家が対等に空間をつくる環境芸術の先駆けともいえる空間が誕生したのだ。

2005年、隈 研吾の改修によって移設され、かたちを変えたとはいえ、そのよすがを見ることができる貴重な機会と言えるだろう。(文/長谷川香苗、写真/新 良太、写真提供/慶應義塾大学アートセンター)



慶應義塾三田キャンパス「建築プロムナード 建築特別公開日」

日時 2015年11月27日(金)〜28日(土)11:00〜16:00

手順 1. 慶應義塾大学三田キャンパスの配布場所で「建築マップ」を入手
     建築マップでは、公開建築物の場所のほか、各建築物を紹介
   2. マップを片手に建築散策
     公開対象となっている建築物を自由に見学可
     授業などの関係で、外観のみ見学となっている建築物あり

詳細 http://www.art-c.keio.ac.jp/news-events/event-archive/