REPORT | プロダクト
2015.11.24 08:38
無垢の木を生かした椅子づくりで知られる徳島の家具メーカー、宮崎椅子製作所の展覧会がアクシスギャラリーで開催中だ。2001年から15年までに販売された全椅子74点が一挙展示されている。
白いパンチカーペットを敷いて年表のような空間に。会場構成は小泉 誠氏による。
アクシスギャラリーで恒例となった宮崎椅子製作所の展覧会。今年は初の試みとして、同社が11年よりはじめたオリジナルデザインの椅子を生産休止中のものも含めて全74脚紹介している。宮崎 勝弘社長によると「全ての椅子のうちさまざまな事情で生産休止となっているのは約半数で、初期のものが多い」と言う。昭和44年の設立以来、木製椅子のOEM製造を中心に行ってきた。村澤一晃氏や小泉 誠氏ら家具デザイナーと協働し、ワークショップで生まれたオリジナルデザインの椅子を販売しはじめたのは01年。当時はまだ販売店が少なく、ユーザーに知られる機会も多くはなかった。そのため生産の偏りや売り上げの状況により生産休止を余儀なくされたという。「新作だけが必ずしも良いデザインということではないと思う。その時代には受け入れられなかった椅子を今の目で見て再評価していただけたら」と宮崎社長。会場では来場者に投票をしてもらい、高評価を寄せられた椅子は再発売したいと考えている。
2001年から15年まで販売されたすべての椅子を1年ごとに分けて展示。
1年ごとに椅子を分けた会場は、宮崎椅子のデザイン年表のようだ。9脚発表された年もあれば、3脚のみの年などさまざま。宮崎社長は「1年に何脚作るか決めているわけではない」と話す。「デザイナーと協働して『これ以上手を加えるところがない』という時が完成なので、うまくいけば3回のワークショップ(約6カ月)で販売できるケースもあるし、1年や2年かかることもある」。
村澤氏、小泉氏とのワークショップを核に、他ののデザイナーたちとも積極的にコラボレーションしてきた。こうして俯瞰してみると、それぞれのデザイナーの個性を感じさせつつ一貫して宮崎椅子らしい「軽快さとつくりの良さ」がしっかり表われている。来場者によるアンケートでは、01年に発表したオリジナル第1号、「KK」シリーズおよび「MM」シリーズへの関心が高いようだ。いずれも生産休止中だが、丸みを帯びたラインと直線的なラインの2種類を常に用意するのは現在の宮崎椅子にも通じる。宮崎社長も「どの時代も一生懸命やってきたなあ」と感慨深そうに会場を眺めた。
2001年に発表された「KK」(前の二脚)と「MM」(後ろの二脚)シリーズ。どちらもデザインは村澤一晃氏。
海外進出にも意欲的でミラノサローネにも出展し、来年は5年目になる。海外での認知度も高まり、日本の木製家具が評価されつつあると実感しているようだ。「ヨーロッパではプラスチックや金属から木の家具に移行しつつある。今こそ日本の木のデザイン、日本人の感性によるものづくりを世界の人に見てもらいたい」(宮崎社長)。
小泉 誠氏による「futae」(2015年)。背のあたりを和らげる二重のフレームと畳のカバーリングが印象的。季節に応じて座面を替えることができる。
村澤一晃氏による、革と木のバランスが冴えるノックダウンチェア「sail」(2015年)。村澤氏が宮崎椅子とともに取り組んでいるノックダウンシリーズの最新作だ。
会場では心地よいピアノのBGMが流れるなか、来場者は一脚ずつ腰をかけて座り心地や構造の違いなどを確かめていた。会期は11月26日(木)16:00まで。(文/今村玲子)
宮崎椅子製作所「2001ー2015の全椅子」展
期間 2015年11月22日(日)~26日(木)10:00~19:00(最終日は16:00まで)
会場 アクシスギャラリー 東京都港区六本木5-17-1 アクシスビル4階
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