REPORT | 展覧会 / 工芸
2015.11.11 11:08
東京・六本木のアクシスビル地下1階のシンポジアで、富山発の産業とデザインを融合させたものづくり「TOYAMA DESIGN」を紹介する展覧会が始まった。企画運営は富山県総合デザインセンターで、これまでにも伝統工芸とデザイナーの協働によるプロトタイプ制作やデザインコンペを実施するなど、継続的に県内のものづくりを伝えてきた。
今回の展覧会では、富山の次世代を担う産業として期待される「伝統工芸産業」「ヘルスケア産業」「ロボット産業」の3分野に焦点を当て、県内企業7社の取り組みや商品をデザインという視点から紹介している。
今回はすべて商品として販売されているものが展示されている。
今年、北陸新幹線が開業して各地から多くの観光客が訪れるようになった富山県。「それを受けて県内企業も若い世代向けに新しいシリーズを展開しパッケージを刷新するなど、デザインを活用した商品開発の機運が一気に高まった」と話すのは富山県総合デザインセンターの吉田絵美氏。同センターではこうしたデザイン活用に意欲的な県内企業とデザイナーのマッチングを積極的に行うほか、デザイン性に優れた商品を「富山プロダクツ選定商品」としてPRするといった支援活動を行っている。
富山県総合デザインセンターが中心となって商品化を進めた「越中富山お土産プロジェクト~幸のこわけ」。お土産や引き出物を周囲で分け合うという富山の精神文化を背景に、ほたるいかの粕漬けや昆布みそといった特産品を小分けの統一パッケージで展開。新幹線開通を機に爆発的な人気商品となった。
株式会社能作は400年伝わる仏具のための鋳造技術を生かし、近年はインテリア雑貨や建築金物なども手がける。東京やミラノにも出店し、医療分野にも進出するなど新しいチャレンジに積極的だ。
「デザインセンターでは企業の方々と定期的にミーティングを行い、皆さんの性格も知っているような関係性。また1994年から続くデザインコンペを通じてデザイナーとも顔を合わせており、両者のマッチングは軌道に乗ってきている」と吉田氏。その経験から、短期的に成果を出そうとがんばりすぎるよりは丁寧にじっくりと時間をかけて関係性を築いていくことが成功の秘訣のようだ。
天野漆器株式会社では国宝指定「高岡漆器」の伝統を守りながら、現代のライフスタイルに合わせた漆器を開発。デザインディレクター梅野 聡氏と協働した「DEN」はガラスや天然木に漆や螺鈿細工を施したシリーズ。シンプルな形に繊細な手仕事が際立つ。
五箇山和紙は農家が冬に行う手仕事として伝わってきた技術。デザインチームminnaとの協働で生まれた和紙ブランド「FIVE GOKAYAMA」は蛍光色を用いるなど既存の和紙製品のイメージを一新して成功し、売上も伸びている。
本展で紹介されている県内企業はデザインセンターの支援を上手に活用しながら、自らも積極的に新しい出会いを探究する姿勢をもったリーディングカンパニーばかり。伝統の技術や材料を活かしつつ、現代のライフスタイルや市場を敏感にとらえて新しい企画へと落とし込む柔軟な感性と行動力が一つひとつの商品に表れているように見える。
1876年創業の株式会社広貫堂では、伝統の「富山の売薬」(配置販売業)で培ったノウハウを生かして生薬を用いたオリジナル食品やカフェなどを展開。「富山飴」は昨年のデザインウェーブコンペで準グランプリに選ばれた作品を商品化したもの。11月11日から発売となり県内各地のショップで販売される。
五洲薬品株式会社は富山の海洋深層水や北アルプス系の天然水を目的や機能に合わせて商品化。深層水をベースにした入浴剤やアロマエッセンスの新パッケージをデザインし、新しくなった富山駅のマルシェで人気を博しているという。
会期最終日の11月13日(金)には、ヘルスケア、伝統産業、ロボットの部門ごとに各メーカーの社長や開発者が、識者とともに未来を見据えたものづくりについて語る。豊かな自然や伝統技術を活かしたものづくりを支えるつくり手たちの生の声を聴けるチャンスだ。(文/今村玲子)
豊富な水資源を活かした金属加工や電子部品製造もまた富山の重要な産業分野である。特にロボット産業は次世代の成長柱と見込まれる。株式会社知能システムによるセラピー・ロボット「パロ」は発売から10年以上経ち、世界30カ国以上の病院で導入されるなど大きな成果を上げている。
「TOYAMA DESIGN 伝統工芸・ ヘルスケア・ロボット分野における 今と未来のものづくり」
期間 2015年11月10日(火)~11月15日(日)11:00~18:00(最終日は16:00まで)
会場 シンポジア(東京都港区六本木5-17-1 アクシスビル地下1階
入場料 無料
主催 富山県総合デザインセンター