vol.64 サムスン+ロナン&エルワン・ブルレック
「セリフ」

テレビの主流がフラットパネルタイプになって久しいが、実際に壁掛けスタイルで利用しているユーザーは、どれほどいるだろうか?

確かに新築の家屋などで、最初から壁掛けテレビを意識した設計や部屋のレイアウトがなされた物件ならば、機器の設置もそのように行われてスッキリしたインテリアが実現されるかもしれない。しかし、大半は、どんなに薄くデザインされたテレビでも、倒れないようにそれなりの奥行きを持たせたスタンドが付けられ、場合によってはさらに録画機器やDVD/ブルーレイのプレーヤーを収納するためのテレビ台と称するキャビネットの上に載せられているような印象がある。

また、ブラウン管の時代には、テレビの上面はリモコンの定位置にしたり、本や植物や小物を飾るスペースとして活用され、それが空間のパーソナライズにもつながっていたが、薄型テレビではそうした風情もなくなってしまった。

それならば、いっそ、フラットパネルテレビを薄型化の呪縛から解放し、あえて適切な奥行きと存在感を与えたほうが良いのではないか? そんなデザイナーの思いをしっかり感じられるのが、サムスンがロナン&エルワン・ブルレックのデザインでつくり上げた「セリフ」だ。

タイポグラフィ用語で「ストロークの端の小さな飾り」を意味する名称を持つこの製品は、側面から見るとローマン体の「 I 」の字の形をしており、そのまま、もしくは(最小モデルを除いて)付属する細い4本の脚で自立させたり、上面を細長い飾り棚として利用できる。

また、背面にはファブリックで覆われたカバーが付き、端子やケーブル類を露出させない工夫もある。そして、カーテンモードを選択すると、時計やメニューの表示時には、スクリーンにカーテンがかかったようになり、背後の映像の気配を感じながら、設定変更や時刻確認などを行える。

これがセリフならば、既存のフラットパネルテレビはさしづめサンセリフということになろうか。サムスンは、まず英国、フランス、スウェーデン、デンマークでの販売を11月2日から開始する予定だが、早く日本でも購入できるようにしてほしいものだ。