3億7千900万トン。環境省が発表した平成24年度の日本の産業廃棄物の総排出量です。そして、一般廃棄物は平成23年度の公表数字で4,539万トン。(法律的な産業廃棄物とは? 何の品目を集計したの?と疑問の方は、生のデータをご覧ください。)
企業からの廃棄物の量の多さに圧倒される。いや、もうなんだかわからない数字ではないでしょうか。いちばん多いのは汚泥。次に動物の糞尿、がれき類と続きます。へ?と思いますよね。見たことないものが日本でいちばん多い廃棄物です。そのなかで金属や紙くず、プラスチック、ガラス、木など、まぁマテリアルとして使えるかもねと言うのは、約2,700万トン。これでも良くわからない……。一般的な焼却費用、40円/kgを掛け算すると(もっと安いかもしれませんし、高いかもしれませんが、あくまでわかりやすい目安としてです)、なんと産業廃棄物全体で約15兆円、マテリアルとして使用できるものとして、約1兆円になります。つまり、産業廃棄物を適正に処分、リサイクルするために、日本の企業は15兆円ものお金を使っているという計算になります。
ナカダイの仕事を解釈して、廃棄物の使い方を提案し、捨て方についてさまざまなコンサルティングを展開するなかで、企業には、「廃棄物を処理するためではなく、その費用を廃棄物を活かす、使うことに切り替えましょう」と提案してきました。ナカダイに、廃棄物を処理する費用と廃棄物そのものを全部任せていただければ、最適な流れをつくり、環境負荷も低減し、コストも削減し、CSR? CSV?などの付加価値もつけます!と。
そんななか、なかなか驚く記事が出ました。フランスで、売れ残り食品の廃棄を禁止する法律が出来たというニュースです。売れ残りの商品を廃棄するのに、1兆6,700億円~2兆6,000億円かかっていること、さらに、食品廃棄の問題を学校の授業に組み入れることも決め、企業も関わることができると書かれています。まだ食べられるものを捨ててはダメ、人間が食べられないのであれば肥料に……。処理するのにそんなにお金を使うんだから、そのお金で流通網を構築してください。明快です。ひじょうにわかりやすい。
以前から、マテリアルと食べ物をリンクして話をしていますが、食はトレーサビリティをはじめ、生産から廃棄まで追える仕組みが整っています。これをそのまま素材に当てはめたらどうでしょうか? 仕入れから加工、廃棄まで、企業が資源をどのように手に入れて、廃棄したかがわかる時代。そして、“廃棄”が、“使う、活かす”に置き換わる時代。いかがでしょう。1兆円という資金とその廃棄物=素材そのものが手に入る仕組み、流通やモノの成り立ちを学べる仕組み、廃棄物工場という適正処理やリサイクル化など、モノの生まれ変わる仕組みを体感できる施設、もちろん、身近に存在する環境教育の提供。企業のみなさん、今使っている廃棄物処理費用と廃棄物そのものを、次世代の日本を担う人々への学びの資金、学びの素材として使ってみてはいかがでしょうか。
リニューアルしたモノ:ファクトリーにお越しください。工場を見学してください。捨てるのが当たり前だった廃棄物に対して、捨てない”選択肢がたくさん存在することを実感できるはずです。(文/株式会社ナカダイ 中台澄之)
この連載は株式会社ナカダイ常務取締役・中台澄之さんに産業廃棄物に関するさまざまな話題を提供していただきます。